先に引用した「サンデー毎日」でマツコは、福祉切り捨ての政策と並び「ナショナリズムへの回帰」を「恐ろしい発想」としているが、やたらと「愛国」を叫び、あまつさえ大日本帝国時代の価値観の復活まで主張する人間が出る現在の状況を、マツコは「経済」という戦後の日本国民を支えたアイデンティティが揺らぎ始めたのが原因ではないかと分析。「サンデー毎日」16年8月28日号ではこのように語っている。
「アタシが言いたかったのは、日本人にとって経済が宗教的存在、精神的にすがるものになっている、ってこと。(中略)それが失われちゃった時に、たとえば欧米にキリスト教があったり、また別なところでヒンズー教だったりイスラム教だったり仏教だったりという、すがるものがある人たちとくらべて、心の支えになるものがなかったことが明らかになってしまったわよね」
拝金主義に走り続け、心の支えになる価値観や教養を育まなかった結果、この国は「ニッポン、スゴい」の考えにすがりつくしかなくなってしまったというわけである。そして、そういった人たちに支えられているのが現在の政権なのだ。
「もし仮に「お金という心の支えを失ったことで、日本社会がナショナリズムを強めていくのでは」という話だったとして、まあ、もうすでにそうなってるよね」
旧来のやり方ではもう日本の経済は好転しないということは誰の目にも明らかである。だが、新国立競技場をめぐるゴタゴタを見てもわかる通り、政権がやろうとしているのは、バカの一つ覚えのように公共事業に投資し続ける、昭和の時代から何も変わらないやり方だ。マツコは「EX大衆」14年12月号のなかでアベノミクスの欺瞞もこう揶揄している。
「結局、安倍さんのやろうとしている経済政策って、おじいちゃんの時代とほとんど変わらないんだよね。
東京五輪で莫大な経済効果がもたらされると思い込んでいることもそう。巨大インフラ整備や公共事業投資に力を入れれば、再び日本経済が右肩上がりになるって信じているのね。信じているというか、それしか術を知らないというか」
「安倍さんも結局、既得権益を持つ人たちとは仲良くしていたいのね。所詮は、昔のやり方と同じことやっているのよ」
こういったマツコの批判や皮肉の刃は首相のみならず閣僚にもおよんでいる。とくに、丸川珠代東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣に対しては「スケベなジジイに対するホステス」と辛辣だ。「EX大衆」15年12月号ではこのように語っている。
「この10月7日に発足した第3次安倍改造内閣で、参議院議員2期目にして晴れて環境大臣かつ原子力防災担当大臣になられた丸川珠代さんだけど、組閣の撮影で安倍晋三首相の斜め後ろで微笑んでいる姿を観た時に、「エエッ!? 丸川さんって、こんな笑い方する人だったっけ!?」って思っちゃった。
何かスケベなジジイに対するホステスみたいな笑顔だったよ。こういったことに対して、けっこう否定的なスタンスだった人だよね。だから、びっくりしたね。ちょっと、ショックだったね。あまりに衝撃的すぎて、丸川さんの隣にいた強烈なはずの高市早苗大臣さえ目に入ってこなかったわよ」