確かに父親と決裂した直後の09年、福原は7月のITTFプロツアーでツアーとしては初めてシングルスで優勝を飾り、同時にダブルスでも優勝した。また12月の東アジア競技大会ダブルスでも優勝するなど好調ぶりをアピールした。
しかし、その後も、福原は母親の千代さんとは相変わらずべったりの関係を続けていた。08年に千代さんと兄が家族事務所「千秀企画」を立ち上げ、この会社がマネジメントを行うようになっている。
だが、福原はその母親ともロンドン五輪の頃から徐々に距離をとるようになっていったという。
「仲違いをしたとかいうことでなく、きちんと話し合って、母親と距離を取り始めたということのようです。練習メニューや出場試合などもそれまでは母親の言うことを優先していたが、自分の意思を貫くようになった」(前出・スポーツ紙記者)
そして、今年1月から、福原は前述した母と兄の立ち上げた事務所を離れ、マネジメントを電通の系列会社に委託するようになった。
「愛ちゃんは母親と距離を置いた後も、経済的にはずっと母親や兄の生活を支えてきた。しかし、それもきちんと整理したということのようです。ただ、今も母親とは関係は悪くなっていない。今年2月には恋人の江宏傑さんを引き合わせたとも聞いていますし」
実際、母親の千代さんはリオ五輪直前の7月31日「河北新報」(電子版)インタビューに登場しているが、「現在は監督やコーチにお任せしているし、私はただ見守るしかありません」と答えている。
それがリオ五輪の快進撃の原因かどうかはともかく、愛ちゃんの姿勢については拍手を送りたい。幼い頃からの英才教育の影響で、多くのアスリートは大人になっても、親との依存関係を断ち切れないでいる。そんな中で、愛ちゃんはじっくり時間をかけ、親をきちんと納得させ、自立を実現したのだから。
(林グンマ)
最終更新:2016.08.10 10:42