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クリープハイプ・尾崎世界観が半自伝小説に描いた“家庭内暴力”! 人気バンドのボーカルが抱える闇とは

〈その日から、家族はそれぞれ家のなかで居場所を見つけた。暴力を振るう者と、暴力を振るわれる者、そしてその暴力を見ている者。それぞれがそれぞれの役割をもって存在するようになった。
 ひとり取り残されて、家のなかでは以前にも増して息苦しくなった。あの日、とつぜん割り振られた役割を手にすることができなかった自分を棚に上げて、すべてのきっかけを作った姉のことを恨む。せまい家のなかで、暴力の臭いや音がすると、怖くてたまらなかったから。自分だけが暴力という乗り物に乗り遅れたまま置き去りにされた悔しさでいっぱいになった〉

 第二章以降、この身の上話を語った大学生は物語にいっさい登場しない。それ以降は、スーパーでバイトしながら、売れないバンド活動を続け、性欲だけを持て余しながら思い通りにいかない日常を生き続ける、主人公のどん詰まりの青春が描かれていく。

 無論これは、メンバーチェンジを繰り返しながらクリープハイプを続け、スーパーでバイトした金もライブハウスのチケットノルマ(アマチュアバンドがライブハウスでライブをする際はライブハウス側から20枚〜40枚ほどのチケットノルマが課せられ、さばききれなかった場合は出演者の自腹でそのチケット代を払わなくてはいけない)に消えていく、尾崎世界観自身が過ごした青春である。

「深夜のスーパーですね。梅島っていう、足立区のものすごいガラの悪いところにある店の夜勤。夜9時から朝9時まで12時間もふたりでやるんですよ。午後9時から12時まで、終電が終わるまでってものすごい混むんですよ、サラリーマンとかが来て。で、レジが終わったあとは1時間だけ休憩できて、それが終わったらそっから品出ししたりとかして。朝のその、1時、2時とかに、酪農牛乳っていう牛乳があるんですけど、たぶんそのチェーンのオリジナル牛乳なんですよね。それを死ぬほど品出しするんですよ」(「ロッキング・オン・ジャパン」2015年1月号/ロッキング・オン)
「やっぱり嫌な瞬間が多かったです。『よし、今日はいいライヴできた』と思っても、ノルマのお金取られるし。何でこんなにいいライヴできたと思ってるのに、金取られてるんだ?っていう。結局はそういう自分に腹を立ててましたね」(前掲誌13年9月号)
「ずうっと待って客が5〜6人の中でやるんですよ。カーテンが閉まってて一応SEが流れて、カーテンが開く、その瞬間の絶望がすごくて。リハと変わらないんですよ、風景が。むしろリハのほうが対バンが観てるから人がいるっていう。そういう中でやってて、どんどんこう、自分は音楽が好きなのに、それとは違うものになってく、自分が選んだことが間違ってたっていう結論に近づいていくのがすごい怖かった」(前掲誌15年1月号)

 過去にインタビューで彼が自ら語ったエピソードから、『祐介』の主人公はやはり尾崎世界観自身であることが分かる。では、第一章に出てきた大学生はどうなのか?

 ディティールは微妙に異なっているものの、この大学生の話もまた、尾崎世界観自身が過ごした子ども時代とよく似ている。姉ではなく弟ではあるが、彼も作中の大学生と同じく4人家族である。また、小説では〈子供のころ、父はよく動物園に連れて行ってくれた〉と書かれているが、尾崎世界観の父親はよく競馬場に連れて行ってくれたという。

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