ユニティーでは多い時には400人ほどの入居者がいたというからかなりの収益だ。そのため仕事を見つけ生活保護から自立されるのはユニティーにとって大損害。もちろん80、90代という高齢者もいるが、30、40代の働き盛りの生活保護受給者も同様の扱いだったという。
「(粗末だが)3食昼寝と小遣い付きの生活を経験してしまうと、徐々に働く意欲は奪われる。もう何年もユニティーの寮で生活して、仕事を探す事もなく、来る日も来る日も小遣いをもらって無意味な1日を過ごしている人を見ると、ある種の病気のようにも見えてしまい、私はこのような人達のことを「ユニティー病」と名付けた」
しかしそれこそが貧困ビジネスの狙いだ。劣悪な環境とは思えるが部屋にはエアコンとテレビが完備され、食事も質素ながら3食保証される。そして「仕事を見つけるなら出て行け」といわれれば、そもそも経済的窮地に陥っていた入居者に抗する手だてはない。さらに、ユニティーでは長田氏のような“求人”を待つだけでなく“接触”的な勧誘さえしていた。
「『貧困ビジネス』と呼ばれる業者は、入居者から徴収する生活保護費は財源であるので、いかにして入居者を多く集めるかが商売のカギとなる。最も広く行われている人集めの手法は、ホームレスの勧誘だ。ホームレスが多く集まる公園へ出向いて声をかけたり、中には炊き出しを開催して集まってくるホームレスに『毎日これ食いたくないですか?』などという甘い言葉をかけることもある」
まさに貧困ビジネス業者による“人さらい”とでもいうべきものだが、それほどに貧困ビジネスは旨味があるということだろう。
だがこうした貧困ビジネス以上に問題なのは行政の対応だ。そもそも生活保護に関しては、本当に貧困に喘ぐ人たちにまで行政が難癖をつけて受給させない“水際作戦”を展開している。しかし30代で十分働ける状況にあった長田氏の申請はすんなり通ってしまった。ユニティーの和合秀典社長は事前に長田氏に対し「100%受かるよ」と太鼓判まで押していたというが、それに関し興味深いエピソードが記されている。
それはユニティーが貧困ビジネスをスタートさせた2000年の頃のことだった。
「その頃は、役所の対応が今とはまったく違い、戸田市市役所の福祉課へホームレスを連れて行っても、なかなか申請を受け付けてもらえなかったという。
そこで和合氏が打って出た手段は、同和問題を利用することだった」
なかなか生活保護の申請が受け付けられないことに業を煮やした社長の和合氏だが、暴力団関係者を通じてB連合という同和団体のN氏と知り合うことになったという。そして和合社長とN氏が共同で実行したのが行政機関への仰天の嫌がらせだった。