「テレビ各局、そして安倍応援団メディアはおそらく、『参院選期間中』ということを理由にほとんど報道しないでしょう。このままうやむやになるのはほぼ確定的です」(民放政治部記者)
実際、現在のところ、テレビはほとんどこの事件を扱っていない。数少ない報道も、森山氏らの「返金しているから問題ない」という疑惑否定コメント、菅偉義官房長官の「適切に処理され問題はない」という談話をそのまま垂れ流しただけで、追及の姿勢はまったく感じられなかった。
舛添要一東京都知事のセコい金の問題を連日追及していたワイドショーにいたっては、今回の疑惑を今のところただの一秒も報道していない。
「みなさん、誤解しているようだが、政治家の不正追及は選挙期間中か否かというのはまったく関係がないし、公職選挙法違反でもなんでもない。今回、テレビ各局が報道しないのも、参院選への影響を考慮とかいうような話でなく、官邸と自民党ににらまれたくないからですよ。舛添のことはいくらでも叩けるが、相手が自民党となると、とたんに腰が引けてなにもやれなくなる。それが今のテレビの状況です」(民放政治部記者)
実際、今年はじめに起こった甘利明経済再生担当相(当時)の賄賂疑惑などは典型だろう。
この疑惑は甘利氏が千葉県の建設会社・薩摩興業の依頼で、都市再生機構(UR)へ移転補償金の値上げを「口利き」した見返りに、1200万円もの賄賂を受け取ったというもので、当事者の実名告発や数々の物証もあった。しかしその後、何が起こったかといえば自民党による「甘利氏は嵌められた」というスリカエ情報操作だった。マスコミも自民党リークに乗って「謀略説」を繰り返し報道した。その後甘利氏は辞任し、直後には「睡眠障害」と称する仮病入院をするが、それに対して追及するメディアは皆無だった。
それだけではない。この疑惑に対し東京地検は4月にURを家宅捜索し、甘利氏の元秘書らを事情聴取するなど立件を視野に動いていたが、しかし参院選を前にした6月1日、一転して全員に「不起訴処分」の判断を下した。その際、指摘されたのが自民党とべったりな関係にある法務省ナンバー2官僚の黒川弘務官房長の介入だった。黒川氏は安倍政権、特に菅義偉官房長官と非常に親しく、政界、自民党からの意を受け捜査を妨害、立件を潰したとされる。しかし、それでも、新聞もテレビもほとんど批判することはなかった。
ようするに、安倍政権に近い政治家、自民党の中枢にいる政治家はどんな不正を働こうとも、マスコミに追及されないし、検察に摘発されない。そういう構図ができあがっているのだ。これはもうほとんど、独裁国家寸前の状況といってもいいのではないだろうか。
(田部祥太)
最終更新:2016.06.28 06:39