本稿冒頭で引いた通り、〈人の才や器は、人体の一局所の特殊な摩擦経験の有無によって決まるものではない〉というだけでなく、もっと一歩踏み込み、童貞の期間が長ければ長いほど、その人のクリエイティビティーは花咲くと主張する人もいる。みうらじゅん、伊集院光の対談本『D.T.』(メディアファクトリー)には、自分たち自身の経験も投影しながら、こんな意見が交わされている。
みうら「大人になってモノを創るような人間は、間違いなく童貞期間が長かったと思うんだ。モテなくて、セックスできなくて、その代わりにせっせと文科系の腕を磨いたわけでしょう」
伊集院「いろいろ文化的なことに興味覚える前に女を知っちゃうと、そんなことはどうでもよくなりますからね。悪かないけど、普通にモテ組、ヤリチン組の道に行っちゃう」
実際、最近は童貞のイメージも決してネガティブなものだけではない。たとえば、おそ松兄弟が全員ニートで童貞の大人になっているという設定の『おそ松さん』(テレビ東京系)が大ヒットを記録、とくに女子から大人気を博した。
童貞増加の流れは、おそらくこの先も変わることはないだろう。生涯未婚率も1990年に男性で約6%、女性で約4%ほどだったのが、現在では、男性で約25%、女性で約15%にまで急上昇。このまま行けば、2035年には男性で約30%、女性で約20%にまで達すると推計されている。もちろん、それとともに少子化もどんどん進んでいく。
しかし、恋愛やセックスや結婚よりももっと楽しく、夢中になれることがあるならそれはそれで、全然かまわないじゃないか。少子化だって国家単位で考えれば国力減退につながるが、人口爆発が続いている地球規模で考えればわるいことじゃない。
そして、本書にもあるように、恋愛やセックスに背を向けて何かに夢中になった結果、より多くのひとを幸せにしたり、すべての人類を救う発明を思いつくことができるかもしれないのだ。
全国の童貞諸君には「無理に捨てる必要はない」、むしろ童貞をつらぬいて、偉人になれ!」とエールを送っておこう。
(田中 教)
最終更新:2018.10.18 05:47