だが、昨日になって自民党は、なぜか予定を変更。14時からの有楽町での安倍首相遊説をホームページの告知から外した。しかも、11時からのJR船橋駅南口前、12時30分からのJR市川駅北口前、16時からのJR吉祥寺駅北口は事前告知のまま。急遽、有楽町の遊説を“ドタキャン”したのだ。つまり、直前になって安倍首相は敵前逃亡したのである。
自分からケンカを仕掛けておいて、自ら尻尾を巻いて逃げ出す……。肝が小さいわりに威勢のある振りをするというのは、いかにも安倍首相らしい虚勢を張り方ではある。だが、この事実はようするに、口では野党を貶めて“俺のほうが上”とマウンティングに余念がないのに、心の奥底では野党共闘に恐怖心を抱いている、ということの証拠だろう。
しかも、だ。実際、有楽町の野党合同街宣と、吉祥寺での安倍首相遊説を比べると、熱気の差はハッキリ言ってまったく違うものだった。
吉祥寺では、熱狂的な安倍信者が前に固まって必死になって拍手を送っていたが、大半は“有名人”の登場にスマホで写真を撮る人びとばかり。いざ演説がはじまっても、「写真撮れたからもういいや」と言って駅に向かう人が数多く、人だかりの中〜後方では、安倍首相のスピーチに対して拍手はほとんど起こっていなかった。それはそうだろう。いくらアベノミクスで景気が回復したとアピールしても、そんな実感をもっているのは一部の富裕層だけなのだから。
他方、有楽町の野党合同街宣のほうは、午前中という人出の少ない時間帯にもかかわらず、「みんなのための政治を、いま。」と書かれた色とりどりのプラカードを持参した市民が数多く参加。昨年夏、国会前で市民が声を上げたときと同じように次々に大きな拍手やコールが起こる盛況ぶり。“絵面”的には、多くの通行人が客寄せパンダの安倍首相を横目に通り過ぎていく吉祥寺の冷ややかな雰囲気とは違い、有楽町のほうが圧倒的に“派手”だったのはたしかだ。
そう考えると、安倍首相はもしかすると、昨年夏の国会前さながらに市民から批判のコールが起こることを恐れ、有楽町での街宣を取り止めたのではないか、とも思えてくる。
現に、安倍首相が街宣車に登壇する前、「安倍政治を許さない」というプラカードを掲げて歩いていた男性は、SPにぴったりマークされ、走って駆けつけた警官に注意を受けて街宣車から遠ざかるように誘導されていた。記者が警官に話を聞くと、「プラカードはデモ扱いになるので、きょうはデモは禁止なので」との説明だった。