「タックスヘイブンってのは、節税組織でも脱税組織でもないの。これは、単に名前の分からない会社を税金を払わなくてつくることができる、それだけのことなの。そこに日本から金を送るでしょ、当然、そうすると日本の税務当局っていうのはね全部把握できるんだからいま」
「だから会社はね、申告して送ってるんですよ。そうすると会社の財務諸表に残んの。必ず、年度末に税務署から『あれどうなりましたか?』って聞かれるわけ。パナマ経由でアメリカに投資して儲かりました、するとアメリカで税金かかりました、それで比べて日本の税金が多かったら、その差額を日本で払わされる。あの、ちゃんと、タックスヘイブン制度っていうのは日本の税制にはあって、脱税することは絶対にできない」
要約すると木村氏は、タックスヘイブンに日本から金を送っても日本の税務当局はすべて把握できるから、会社は税務署に申告せざるをえず、脱税は不可能、と言っているわけだ。
って、おーい。木村氏は、アメリカや欧州各国がずっとタックスヘイブンに情報を公開しろと迫ってきたことを知らないのか? それが拒まれ続けた結果、投資元の匿名性が温存されてきたことは言うまでもない。これを「名前のわからない会社を税金を払わずにつくれる。それだけ」って、どれだけいま世界で問題視されていることを棚上げしたいのか。
たしかに、日本にも、いちおうはタックスヘイブン対策税制というのは昔からあるが、子会社の海外取り引きを把握できるだけで、適用除外会社やファンド(投資事業組合)にしてしまえば、この制度では、捕捉できない。
また、失笑してしまうのは、タックスヘイブンへの資金移動が必ず財務諸表に記載されるなどと断言していること。大嘘もいいとこだ。
実際、マネーロンダリングや粉飾決算、あるいは資金洗浄が目的で、子会社や孫会社、関連会社をいくつも間に挟み、最終的にタックスヘイブンのペーパーカンパニーに投資するケースはいくらでもある(というか、これが一番問題視されている)。そもそも、タックスヘイブンで税金逃れが不可能ならば、なぜ、数多の企業がわざわざ匿名のダミー会社をつくってオフショア取引をしているのか。いくら素人でも、ちょっと考えれば、わかりそうなものだろう。
しかし、木村氏はこんなトンデモ解説を続ける。
「タックスヘイブンがいきなり節税制度や脱税制度だっていうのは間違いだし、こういうところに名前が出てきた会社っていうのは、本当は真っ正直にやってる会社。これがないと、日本の経済活動、金融活動っていうのはメチャクチャになってしまう」