読売新聞公式HP「読売新聞へようこそ」より
新聞業界に激震が走った。3月末、朝日新聞社が「押し紙」問題で、公正取引委員会から「注意」を受けたのだ。
「押し紙」というのは、新聞社が広告料金を維持するために、宅配部数以上の部数を刷って、販売店に余分な新聞を押し付け、発行部数を水増しするという手法。全国の日刊紙の発行部数の2割がこの押し紙で、毎日1000万部が廃棄されているという話もある。
また、新聞社は販売店にこの押し紙の分も代金を払わせており、明らかに独占禁止法に抵触する。
そして、この押し紙については新聞各社がこれまでその存在を一切認めず、新聞業界最大のタブーとして隠蔽されてきた。そこに、今回、とうとう公取委が切り込んだというわけだ。
しかし、不思議なのは、なぜ、注意を受けたのが朝日新聞だったのか、という点だ。というのも、「押し紙」は新聞全紙がやっているうえ、一番有名なのは読売新聞だったからだ。
たとえば、2009年には「週刊新潮」(新潮社)が読売新聞の販売店主の実名告発で「押し紙」問題を連続して取り上げ、大きな注目を集めた。
「わたしは今年3月まで、滋賀県で2店のYC(読売新聞販売店)を経営していました。配達していた朝刊は約7000部。しかし、読売新聞社は一方的に毎朝8750部もの新聞を搬入し続けていました。当然、1750部は配達されないから販売収入もありませんが、その分も卸代金を請求されたのです」(09年6月11号より)
「週刊新潮」では他にも複数の販売店主からの証言や、「押し紙」が回収され、古紙として売られる現場写真を掲載するなど追及を続けたが、しかし、一連の記事に対し、読売新聞は新潮社と執筆者でジャーナリストの黒薮哲哉氏を名誉毀損で提訴した。
裁判は最高裁まで争われ、その過程で、さまざまな「押し紙」の証拠が提出されたが、結果は、読売側の主張が認められ、13年に読売新聞の勝訴が確定している。販売店が過剰な部数の新聞を買い取っていることは証明されたが、新聞社が買い取りを強制したことが立証不十分とされたのだという。