その3 奥崎謙三、出所翌日に失神しセックスにハマる事件
イベント後の早朝ソープが『ゆきゆきて、神軍』のあのアナキストを変えてしまった!
ロフトプラスワンは、カリスマ的な支持を集めていたひとりのアナーキストの晩年を変えてしまったこともある。
その人物とは、映画『ゆきゆきて、神軍』でおなじみの奥崎謙三。昭和天皇にパチンコ玉を発射する事件や、『田中角栄を殺すために記す』という単行本を出すなどして殺人予備罪で書類送検されるなど、たびたび過激な事件を起こしてきた彼だが、そんな奥崎が殺人未遂罪などで10年以上の刑に服し、出所した翌日にトークイベントにブッキングするという、とんでもない催しを企画したのである。娑婆から10年以上離れていた男が、自由の身になった翌日から早々に新宿へと出掛け、果たして無事に帰って来れたのだろうか?
平野「約20年刑務所で過ごした赤軍派議長の塩見孝也もイベントが始まる前に『10年近く刑務所に入ってた人間が人前で喋るなんて絶対にできない』と言っていましたが、確かにできなかった。客を挑発するパフォーマンスはすごかったけど、途中、ステージ上で泡吹いて倒れちゃって。それで事務所まで連れていったんです」
そんな彼を介抱したのが、特殊漫画家の根本敬氏。これがまずかった……。この出会いが、後に「死んでいった戦友を供養するため奥崎氏がセックスしまくる」という、どうかしているとしか思えない筋書きのトンデモ映画『神様の愛い奴』がつくられるきっかけになる。
平野「そこで根本敬が奥崎さんを引っ掛けるんですね。悪い奴ですよ。そのまま奥崎さんを早朝ソープに連れて行ったんです。この出来事が映画をつくる話につながるんですね。その映画が、もうひどいんですよ。奥崎謙三が女にハマって、最後には、スカトロからアナルファックまでやっちゃう(笑)。それは、奥崎信者は怒りますよ」
その映画は、女装した奥崎氏が男装のSM女王様にレイプされたり、ペニスバンドをアナルに挿入されたりと衝撃的シーンの連続。大槻ケンヂ氏はこの映画に対して「いくらなんでも、頭いかれ過ぎですよこの映画」「キチガイもホドホドを越えると神様ですよ、正味の話」とのコメントを残しているほどだ。
そんな映画がつくられるそもそものきっかけは、あの時ロフトプラスワンのステージに立とうとしたことなのだった。奥崎氏は05年に他界しているが、もしもあの時、ロフトプラスワンのイベントがなければ、いまの彼のイメージはもっと違うものであったのかもしれない。