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嵐・二宮がアカデミー賞! 『母と暮せば』公開時に吉永小百合と山田洋次監督が語っていた安倍政権と安保法制批判

 吉永は、本作で山田洋次監督が何を伝えようとしているのかを、このように話す。

「死とはどういうことか、生とはどういうことか。山田監督のとても大きなメッセージのような気がします。人は生を全うすることで死を選びとることができる。原爆はその生を一瞬で死と化してしまいます」

「長崎への原爆投下によって浩二のいた長崎医科大学では九百人近い人が、長崎全体では七万人以上の人が即死し、被爆で十四万人以上の方が亡くなった。でも数ではなく一人ひとりにさまざまな人生があることをこの映画は教えてくれているように思うのです。それが母と息子の物語となる。被爆からの三年間がどうだったのか。子を失った母親がどんなに辛いか。戦争の悲惨さとはそういうことなんだよと、山田監督は伝えたいと思ってらっしゃると思うのです」

 吉永にとっても原爆への思いは深い。1966年に出演した『愛と死の記録』では、原爆の後遺症に悩む青年を愛する少女の役を演じたが、「週刊朝日」(朝日新聞出版)2015年8月21日号のインタビューでは、そのとき「原爆ドームやケロイドの顔が出ている場面がほとんど削られてしま」ったことに「原爆をテーマにした映画なのに、なぜという強い思いの中で、撮影所の食堂前の芝生で座り込みをしてしまいました」というエピソードを紹介。さらに1981年に主演したNHKドラマ『夢千代日記』で胎内被爆をした女性を演じたことから、97年には原爆詩の朗読CD『第二楽章』を制作、原爆詩の朗読をライフワークにしてきた。

 女優として戦争と向き合ってきたからこそ、吉永は平和を祈る気持ち、戦争を拒む姿勢をもち続け、いまの状況を看過できないのだろう。実際、前述の「SWITCH」では、「先の戦争を経た悲しみの『第二楽章』を経て、今、また混沌とした『第三楽章』がはじまる、そんな気がしています」と強い危惧を表明している。

 その思いは、本作『母と暮せば』で音楽を担当した坂本龍一も同様だ。

 今回の映画では、被爆した詩人・原民喜の『鎮魂歌』を歌詞に採用し、映画のラストで市民たちが合唱するシーンが登場する。山田洋次監督は「SWITCH」での吉永、坂本との鼎談で「この映画は一九四八年の長崎が舞台ですから、最後に今の長崎市民に登場してもらって、現代に繋がるようにしたかったんです」「「良き明日が来るに違いない」、あるいは「来て欲しい」という思いで終わる詩ですからね」と語るが、この言葉に坂本はこう反応している。

「同時に「でも果たして現在は?」という疑問も投げかけているわけで、問題が現在に繋がっている。単なる過去の話ではないということもおっしゃっているわけですよね」

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