実際、中尾はブログでこの『陽性』を執筆した動機を、このように書いている。
〈生きるためにある命。いつか必ず死がある命。それでも人は産まれてきて生きていくのです。そんな考えから書き出しました〉
たしかに、中尾が描く芸能界の舞台裏は、女優が宿した命を“商品を傷つけるもの”としか扱わない。こうしたことに中尾は怒りを覚えていたのかもしれない、と思わせる記述ではある。
ちなみに物語のほうは、ほかにも女性タレントとIT起業家たちが参加する飲み会「アヤノ会」(まるで一時の沢尻エリカによる「沢尻会」を彷彿とさせる)を開く若手女優・桜木アヤノがライバルのなつき潰しのために暗躍したり、関東連合を思わせる半グレ集団が登場したりと、盛りだくさんの内容。そして最後は、芸能人が身ごもった命を守るためにできる“裏ワザ”が示唆されている。
処女作にしてなかなかエグい内容だが、中尾には次回作でベッキー不倫をベッキーからの視点で、あるいはSMAP騒動の内幕を小説化してほしいと希望せずにいられない。とくに中尾を『GOOD LUCK!!』(TBS)でのキムタクの弟役に抜擢したのは、あの飯島三智マネージャーだったという逸話がある人物。飯島マネージャーの苦悩を小説として描いたら、いまならベストセラー間違いなしに違いないが……中尾クン、いかがでしょう?
(大方 草)
最終更新:2016.02.23 07:30