本サイトでも何度も指摘しているが、今回の騒動で浮き彫りになったのがメディアの歪な構造だった。ネットでは「謝罪会見は公開処刑」「SMAPは死んだ」といった声が大きな広がりを見せたが、しかし、テレビやスポーツ紙はジャニーズ事務所の意向を垂れ流し続けた。特にテレビ局はSMAPをドラマやバラエティ番組に起用するという親密な関係にあるにもかかわらず、独自取材もせず、事務所の意を受けたスポーツ紙や週刊誌の報道を検証することなく、ただただ追随し紹介するだけだ。
こうした事態に、テレビコメンテーターを務めるデーブ・スペクターや“夜回り先生”こと水谷修が疑問の声を上げたが、しかしマスコミはこれさえも黙殺した。そんな状況の中、たけしが声を上げたことは大きな“事件”でもある。しかも解散騒動で最も得をした代表格として、フジテレビを名指しして、だ。
今回、フジテレビの果たした役割は醜悪ともいえるものだった。SMAPだけでなくジャニーズ事務所との関係が深いフジテレビは、騒動が勃発する以前からSMAP追い出しの情報を掴み、“SMAP後”ともいえるシフトを組んでいた。SMAPの飯島三智チーフマネージャーに近い番組スタッフを人事異動で現場から外し、いち早く飯島マネージャー=SMAP切りといえる態勢を整えた。また騒動が明るみになった13日の翌日、『SMAP×SMAP』収録の後に中居正広が中心になり会見を開こうとしたが、しかしジャニーズ事務所側の圧力から、これを潰した。
さらに18日の謝罪会見。『スマスマ』というフジテレビのバラエティ番組の中で緊急生放送を行うのは異例の措置だ。通常、会見は場所を設定して各社の記者を集めて行われるはずなのに、それをひとつの番組で独占し、質問もさせず、囲い込んだ。広く情報を共有させることなく独占し、しかも事務所側に最大の配慮をしたのだ。テレビ局が報道機関としての役割を担う事を考えれば、大きな問題といっていい。しかし普通なら取材の自由を盾に猛抗議するはずの他メディアはこの異常事態に疑問の声さえ上げていない。
もちろん、たけしのコラムはこうした問題に正面から切り込んだものではない。しかし芸人ならではの毒舌、皮肉で一石を投じたのは明らかだろう。
たけしは同コラムでSMAPだけでなくベッキーの不倫問題についても言及している。たけしの孫娘はベッキーの大ファンらしいが、騒動についてどう説明すればいいかわからないというのだ。
〈「おじいちゃん、ベッキーちゃんなんで怒られているの?」「何か悪いコトしたの?」 って聞かれたら一体このオイラに何がいえるんだっての(笑い)。〉
〈ベッキーを心の底から責められるニッポン人が何%いるのかってこと考えりゃ、ちょっとこのつるし上げは可哀想だよ。〉
現在、18歳年下の愛人と不倫同棲中のたけしの言葉だけに、これもベッキーの不倫だけが責められるメディアへの皮肉なのかもしれない。
(林グンマ)
最終更新:2016.02.02 06:24