映画『ふたりの死刑囚』公式サイトより
「再審」──裁判所が確定した判決に重大な瑕疵がある場合、裁判をやり直すという制度である。だが、日本の再審制度は“ラクダが針の穴を通るより難しい”と言われている。
昨年末時点で、死刑判決確定後、執行されていない死刑囚は127人。少なからぬ確定死刑囚が、拘置所のなかで無罪を主張し、再審決定の日を待ち望んでいる。しかし、世間の記憶は次第に薄れ、彼らの名前は一時の間忘れ去られる。そして、次に巷間にその名が表れるときには、往々にして、すでにこの世にはいない。
昨年10月、ひとりの確定死刑囚が獄死した。奥西勝、享年89歳。1961年、三重県名張市の小さな村落の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ村民のうち女性5名が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、35歳のときに逮捕。決めては自白だったが、奥西は取調官による強要を訴え、一審では無罪判決が下った。しかし、高裁では逆転死刑判決、1972年に確定。奥西は獄中から46年間、再審請求を何度も繰り返し、そして2015年、八王子医療刑務所でその生涯を終えた。
この事件に光を当て続けてきた人物がいる。東海テレビの齊藤潤一。自身初のドキュメンタリー作品『重い扉〜名張毒ぶどう酒事件の45年〜』(06年)以降、これまで司法を題材に数々の作品を手がけてきた。そして昨年、監督を東海テレビの後輩である鎌田麗香に託し、自身はプロデューサーという立場から最新作『ふたりの死刑囚』を制作。奥西の獄死を受け、今年1月16日より、劇場版が緊急公開される。本作は、名張ぶどう酒事件の奥西と、一昨年に静岡地裁で再審開始の決定が下された袴田事件の袴田巌を追ったドキュメンタリーである。
なぜ名張事件を追及し続けるのか、なにが再審の扉を阻んでいるのか。劇場版公開に先立ち、齊藤プロデューサーに話を聞いた。
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