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AV誕生から35年──カンパニー松尾&バクシーシ山下、2人のレジェンド監督が語るAV業界の変遷とは

 この時代は女子高生の「なりたい職業」に「キャバクラ嬢」が登場してくるなど、「承認欲求」がキーワードとなった時代。彼女らの「自分語り」には、そんな状況も影響しているのかもしれない。

 そして、00年代後半以降、蒼井そら・Rioらによるアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」をはじめ、「アイドル」と「AV女優」の垣根がどんどん崩れ落ちていく。実際この時代に入り、AV女優の仕事はビデオの撮影だけでなく、それらDVDの発売イベントでファンと握手やチェキを撮ったりといった、AKB48などのアイドルグループと何ら変わらないアイドル的な活動も重要なものとなっていく。バクシーシ山下は〈客が集まるコって、ファンの顔と名前を完璧に覚えてるでしょ〉と語っているが、このあたりも一般のグループアイドルと変わらない。そして、このような活動がAV女優の仕事観を劇的に変えたと彼らは言う。

〈松尾 SNSやブログの登場でAV女優のメンタリティはガラッと変わったと思う。やっと自分の仕事や活動に実感を得られたんですよ。毎度、現場で好きでもない男優とパコパコしてるっていうだけではやっぱり心が病むでしょ。
(中略)
 それがSNSやブログの登場で、自分自身の日常について語り、応援してくれるファンがいることを確認できた。AV女優の承認欲求が初めて満たされたんじゃないかって思うんですよね〉(11月23 日号)

 こういった要素が、「季節をまたぐのはひと握り」であったものから、吉沢明歩のように10年以上も第一線で活躍し続ける人を生み出した一つの要因であるようだ。

 しかし、すべてのAV女優がこのように幸せな活動をできているわけではない。二人は語っていないが、「AV」と「芸能界」の垣根がなくなりつつあるいま、逆にそれがトラブルを起こしている。

「アイドルとしてスカウトされ、普通の芸能事務所だと思って契約したら、実はそこはAVの事務所も兼ねており、アダルトビデオへの出演を強要された」。先日当サイトでも、昨今そのようなケースが増えつつある旨を報じたが、なかには2400万円もの違約金を請求され裁判になるケースもあり(判決の結果、請求は棄却)、業界が完全に健全化されたとは胸を張って言えるような状況にないのも事実だ。

 AVが35年目を迎える2016年。構造不況も叫ばれている中で、AVはどう変わっていくのだろうか。
(田中 教)

最終更新:2018.10.18 03:47

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