カンパニー松尾といえば「ハメ撮り」という演出手法を生み広めた監督として知られているが、その発端にも、スタッフと女優が容易く関係をもってしまう業界の風潮が影響している。「ハメ撮り」が生まれたきっかけ、それは、カンパニー松尾がAV女優の林由美香に恋をしたことにあるという。
〈松尾 僕は彼女に恋をしたんです。これがハメ撮りを始めた最大の理由です。
(中略)
俺は監督だから、好きになった由美香を男優とハメさせなきゃいけないし、撮影後に「どう? チ○ポ気持ち良かった?」とか聞かなきゃいけないわけじゃないですか。
(中略)
でもそれって視点が全然一致してないでしょう? 俺は彼女が好きなのに、他人とヤラせてる。だったら自分がセックスして、自分で撮っちゃえばいいと……その感情が原点ですよね。青臭い発想ですけど(苦笑)〉(10月19日号より)
なぜスタッフとAV女優がこんなズブズブな関係になっていくのか? それはひとえに当時の事務所の管理がいい加減だったからに他ならない。当時の業界のデタラメさを象徴する話として二人はこんな思い出を語っている。
〈松尾 当時の事務所ってスゴいずさんだったんです。税金逃れで、1年ごとに社名が変わったり。
山下 名刺の会社名とか住所とか全部デタラメ(笑)。
松尾 マネージャーの名前すら偽名でね(笑)。なぜか“伊集院”とか“西園寺”とか、よくいましたよね。
山下 「会社名が変わったんで僕の名前も変わりました」とか言いながら名刺切ってねぇ〉(10月12日号より)
それは女優のマネージメントも杜撰になるわけである。しかし、00年代に入り、ソフト・オン・デマンドが『会社四季報』(東洋経済)に掲載されたり、AVメーカーに早慶を出た新卒が入社するような時代に入ると状況は一変する。
〈山下 現場でのスタッフと女優の関係も変化してるしね?
松尾 この頃からスタッフと女優が現場でメシを一緒に食わなくなってます。女優はメイク室にこもってマネージャー、メイクと食べるようになって。スタッフが女優とヘタに絡むと事務所ににらまれるからね。男優ですら女優と仲良くしなくなったよね。セックスしてるのに会話はない。
山下 チ○ポ入れて出すだけの関係ってことでしょ。
松尾 それもこれも事務所に疑われて、NG出されたくないからですよ。そのコだけじゃなくて、事務所に所属する女優全員NGにされるから〉(11月9日号より)
撮影中のロケ弁すら一緒に食べないのは逆に行き過ぎな気もしなくもないが、恋仲にあったAV女優を他の男優と絡ませたくないから「ハメ撮り」を編み出した時代から遠くまで来たものである。