内山は「あーーーー、そうか。そう言う態度で来やがるのか。とびっくりです。クレーマー処理の達人の俺としては、こいつは何一つ分かってない。一般企業ならまだしも夢の国を謳う世界で、マニュアル持ち出して愛情のない断り方をしやがって本当に腹が立った」「僕らの言ってることは迷惑かも知れない、けど、僕らと同じ状況の人なんて5人もいないだろうと思う、僕らを許してしまったら100人200人に説明がつかないのとはわけが違う」と力説。「こっちの要望が通らないだけならまだしも、向こうのスタッフのミスの責任すらも何も取らない。変な話、どうとでも出来る話です。横からコソッと入れたり、なんかサービス券渡したり、『気持ち』が見えれば納得できる話です。ただ、全くなかった」と、ディズニー側の対応に不満をぶちまけたのだ。
これに対して、ネット上では「わがまま言うな」などとディズニーよりも内山に批判が集まっているようだが、はたしてそうだろうか。少なくとも、一流ホテルならこういう木で鼻をくくったような対応はしなかっただろう。結婚式をあげた客であれば、断るにしても、相手を怒らせることなくケアをしていたはずだ。
その意味では、「俺たちは数字じゃない。感情を持った人間で、気持ちの受け渡しこそが全てだと思う。断るにしても断り方があるし、ミスを犯しても対応の仕方がある。そこに関してあまりにもあぐらをかいてるんじゃねーか?って事」という内山の主張はもっともなのである。
ただし、こうした対応は、内山が指摘するように「最近の東京ディズニーリゾートはあぐらをかいて、調子に乗っている」からではない。むしろ、構造的にマニュアル対応をさぜるをえない状況になっているのだ。
東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドの売上高は4703億円、連結純利益は722億円で、純利益の最高益更新(2016年3月期見通し)と調子がいいように見えるが、実は現場はコストカット最優先で、ゲスト(顧客)の対応が充分にできていないのだ。非正規雇用労働者が中心のキャストの待遇改善を訴えるオリエンタルランドユニオンは、次のように話す。
「東京ディズニーリゾートは効率重視でキャストの数を削減しています。これまで5人でやるべきところは4人のキャストでやりなさい。それでも足りなければ子会社の時給の安いアルバイトを補てんしてといった形です。このため、マニュアルに沿った対応しかできず、ゲストのニーズには充分な対応ができないのです」
「さらに、キャストもほとんどがアルバイトなどの非正規雇用。権限のある社員は現場のことがわからないのでオモテにはなかなかでてきません。事実上、アルバイト任せなんです。これまでは“夢の国”のキャストを演じようとした非正規雇用の労働者ががんばって取り繕ってきましたが、低賃金なうえに、削減されたキャストで大量のゲストに対応しなくてはならず疲弊しているのです」