すると、観客席にいた森氏がこれに参戦して、もうひとりのレスラーを足蹴り。さらに馳がこのレスラーを羽交い締めにすると、森会長は小島選手に向かってパイプ椅子を振りかざして殴りかかろうとしたのだ。さすがにこれは周囲に止められたが、引退試合は完全に森=馳コンビによるタッグマッチの様相を呈していた。
「もちろん、これはプロレスの“仕込みパフォーマンス”で、森さんも承諾済みのことだった。実際、試合後の引退セレモニーでも森会長はリングに登壇して花束贈呈してましたしね。もっとも、主催の全日本プロレスには抗議が殺到して、武藤(敬司)社長が謝罪する事態になったようですが」(プロレス記者)
とんだ茶番だが、ようするに両者には、こういう馴れ合いパフォーマンスを一緒にやるくらいの一体関係があるということらしい。
しかも、12年7月、森会長が引退を表明すると、馳氏は直接、森会長に面会し、「国政や2区のために」必死で慰留してもいる。首相在任時にはあれだけのスキャンダルや失言を連発し、その後も政界に居座って「老害」といわれていた政治家にここまで尻尾をふるというのは、どういうセンスをしているのか、と疑いたくなるが、馳氏は森氏にかなりの恩があるらしい。
「馳さんは森さんから資金的な援助も相当、受けていますからね。絶対に森さんの言うことには逆らわない。森会長の意のままに動く兵隊、いやロボットといってもいい」(前出・全国紙政治部記者)
そして、だからこそ、森会長は今回、馳を文科相にプッシュしたのである。
「相次ぐ失態で、森会長が表立って口を出すのは難しくなってきましたからね。そこで、子飼い中の子飼いである馳氏を文科相に就任させることを考えたのでしょう。すでに、五輪担当相にはラグビーを通じて師弟関係にある遠藤利明氏を就任させている。文科相もおさえておけば、東京五輪に対する森会長の影響力は盤石ですからね」(大手紙政治部記者)
森会長は馳氏の大臣就任を「20年東京大会の成功に向け、ともに手を携えて取り組んでいけることは誠に心強い」とあからさまに喜んだ。
だが、それはイコール、東京五輪をめぐる不祥事や混乱のリスクがこれからも続くということでもある。