いずれにせよ、森元首相はJSCを押さえることで、国立問題を私物化してきたことには違いない。莫大な金額が投じられる国家的事業がこの老害政治家のおもちゃにされることは絶対に避けなければならないが、忘れてはならないのが、森氏の“暴走”を放置してきた安倍晋三首相の責任である。
前述の「週刊新潮」に、下村文科相のインタビューが掲載されているのだが、そこで下村文科相は、今年6月中旬には「ザハ案以外を採用した方がいいのではないか」「7月中に変更を決断すれば、ラグビーW杯にも間に合います」と安倍首相に提言したと語っている。そして再度の検討をしていた間、安倍首相からこんなことを言われたという。
「ザハ案をやめる場合、組織委員会会長の森さんの了承を得る必要がある。森さんがOKなら変更するので、説得してほしい」
下村文科相は6月下旬、森元首相のもとへ説明に赴く。だが、森氏はがんとして首を縦にふらず、物別れに終わった。これは何を意味するか。
周知のように、安倍首相は清和会出身で、森氏直系の子分である。つまり、「森さんの了承を得る必要がある」というのは、言い換えると「新国立計画は森さんに一任している。言うことをきけ」ということだ。当然、森氏が白紙撤回を飲まないことも分かった上での発言であろう。
ようするに、安倍首相はいまでこそ新国立計画を白紙に戻した英雄のように振舞っているが、実は、新国立計画を森氏の好き放題にさせてきた最大の戦犯なのである。「ゼロベースでの見直し」は明らかに安保法制で下がった支持率を回復させるための人気取りにすぎない。
実際、こんな状況になっても、森元首相を東京五輪組織委員長の座から引きずり下ろすわけでもなく、その利権を守り続けている。親分も親分なら、子分も子分だ。決して騙されてはいけない。
(宮島みつや)
最終更新:2015.08.10 08:49