そして、礒崎首相補佐官の主張する〈5千人未満ということだそうです。道路にあふれない限り、そんなに多くの人がいる場はありません〉というのも大ウソだ。実際は道路に溢れるほどの人が国会周辺に詰めかけていたが、それを警察が必死で歩道に押し返し、「道路に溢れさせないように」していたのだ。それはもちろん、メディアが道路に溢れかえる絵を全国ニュースで流せば政権にとって大きな痛手となるため、警察を動員したのだ。
現に、主催発表で10万人といわれた15日の夜はあまりに人が多すぎて一部道路まで人が溢れていたが、翌16、17日にはさらに警官の数が増え、周辺の横断歩道から国会前に人を通させないよう、バリアを張っていた。そして、国会正門前でタクシーを降りようとしても、警官が「ここでは降りられません」の一点張り。一方的な交通規制を敷いている。ちなみに、15日から17日までの3日間、国会前で抗議活動を行った大学生グループ・SEALDsは、人が溢れても混乱状態にならないよう、若い人たちが声を掛けあうなど、冷静に、気を配った運営を行っている。
しかも、15日の夜は、国会正門前交差点から国会前交差点までの歩道はすし詰め状態で、国会議事堂前駅の周辺でも個々に抗議活動が行われていた。もし、国会正門前交差点から国会前交差点までの道路が解放されていたなら、そこを覆い尽くすほどの人数だったはずだ。ちなみに筆者は神宮球場の目の前に住んでいるのだが、15日夜の国会前はヤクルトvs.阪神戦などで満員になったときの観客数くらいはゆうにいるように感じた。神宮球場の収容人数は約3万5000人であるが、国会前では時間を経るごとにどんどん人が増えていったこと、朝から夜にかけて抗議に訪れた人たちの数を考えれば、10万人というのは大袈裟な数ではないと思う。
こうした“民意の数”を、礒崎首相補佐官や、安倍政権の応援団員である百田氏はデマを流して矮小化させる。いや、このふたりだけではない。菅義偉官房長官は16日、定例会見で「国会周辺では若い人達が反対の声をあげているが」と記者に訊かれ、「私は全共闘世代だが当時はこんなもんじゃなかった」と発言。菅官房長官が全共闘運動にかかわったことがあるとは思えないが、この人はほんとうに現場に行ったことがあって、こんなことを言っているのだろうか。
麻生太郎副総理も同様だ。派閥の会合で「ちょっと聞くけど、『とんでもねえじゃねえか』って言って事務所で抗議の電話をもらった人。どれくらい来た? そんなもんか、数十件ね。普通だいたいね、めちゃめちゃ来るはずなんだ、これ、新聞の言う通りだったら」と話し、抗議活動の実態がないかのように語ったが、それは彼のような政治家に抗議の電話をしたところで何の意味もないことを有権者が悟っているからにすぎない。政治家としての人望がないだけなのに、勝手に話をすり替えないでほしい。