ここまで“スカウトマン”という人種について紹介してきたが、05年に迷惑防止条例が改正されて以降、繁華街で通行人を待ち伏せして堂々とスカウト業務を行えば逮捕される危険もあるし、前述したように性風俗の世界の不況とともに、いまではスカウトマンも稼げる商売ではなくなった。
それでも彼らスカウトマンが仕事を続けるのはなぜか? 『日本の風俗嬢』でインタビューに答えている前述の男性はこう答える。
「ボランティア精神というか、女の子のためになにか役に立ちたいみたいな意識がないと、とても続けられないんじゃないですかね」
ほんとうかよ?とツッコミをいれたくなるが、実は『新宿スワン』の原作でも、自分が斡旋した女性について語りながら、主人公の龍彦が「オレはあのコを守ってあげたいッス」「オレこの会社の社員である前に人として正義の味方でいたいんです」と発言するシーンがある。意外に、本気でそんな思いをもって、そのことをモチーベーションにしているスカウトマンは多いらしい。
「現代の女衒」ともいわれるスカウトマンだが、世の中のすべての仕事がそうであるように、“悪魔”なのか“正義の味方”なのか、実際はそう簡単に決めつけられるわけでないということだろう。実際、水商売・風俗・AVなどを仕事にする女性にとって、行政などよりもはるかに必要な存在になっていることもたしかだ。
だとしたら、今は『新宿スワン』の龍彦のような、弱い立場の夜の女性たちを守る“善良なスカウトマン”が少しでも増えるよう祈るしかない、ということだろうか。
(新田 樹)
最終更新:2016.08.05 06:27