そして、最後はお決まりの「ネットにハマった若者」批判だ。現在は無職でネット配信とその反響だけが生き甲斐で、ドローン活動の資金は動画配信の収入で得ていた。そして今回の“動機”もネット上の反響を呼ぶために行為がエスカレートした。そんな物語をしたてた上で、「単なる目立ちたがり屋の幼稚な行為」「ネット依存」「強い自己承認欲求、社会をなめている」と結論づけたのだ。
この少年に対するマスコミ報道の異様さは、先月、同じくドローンを首相官邸の屋上に不時着させたとして威力業務妨害で起訴された40歳男性の報道と比較すれば一目瞭然だ。
そもそもこの起訴自体も、官邸という日本の最高権力に歯向かった報復起訴だといわれているが、しかし、このときのマスコミは男性の“動機”や“背景”にはほとんど踏み込まなかった。
それは本サイトでも既に報じたが、男性が元自衛隊員であり、反原発を訴えるためにドローンに福島の放射性汚染土を搭載していたからだ。こうした動機や背景を報じることは、原発推進を掲げる現政権にとっては不都合であり、メディアは政権に睨まれることを恐れ自粛した。そして「単なるアブナい男」とのレッテルを貼り、事実上、闇に葬った。
それが、今回の15歳の少年に対して、洪水のような勢いでプライバシー暴きの報道を繰り広げたのは、政治的な意味合いがなく扱いやすい上、数字がとれるからだろう。こんな無節操なマスコミ、テレビ局に果たして、少年を糾弾する資格があるのか。
そもそも、彼らの少年への批判を聞いていると、実はすべて自分たちに巨大なブーメランとして返ってくるものばかりだ。
たとえば、宮根は冒頭で紹介した発言に続いて、少年が川崎中1殺害事件の、被害者の通夜や容疑者宅から配信しようとしたことをあげて、こう声を荒げた。
「上村くんのお宅に行って、そんなことやって、何になんねんと。ご遺族の方や、自分自身をふりかえったときにどんな思いやねん、そういう感性がないんか」
信じがたい話だが、この男は自分たちの番組が事件が起きるたびに、加害者や被害者宅の自宅前に押し掛け、葬儀会場前から中継していることをすっかり忘れているらしい。