「(絶縁とは)何を持ってなのかな、と。話せば長くなりますけど、もともと長嶋家はバラバラで、母の生前も6人そろって旅行に行ったことも、食事だってそろってしたことは一度もないです」
「僕は中学から家を出ましたし、弟(次男・正興)もアメリカに行った。去年手紙はやりとりしましたけど、一度も会っていない。だいたい弟の所在を知る人間もいません。妹(長女のこと、法廷では実名)にしても、会っても年に1回です。このように、基本的にバラバラなので、もともとが家族断絶といってもよいと思います」
なんと、ミスターの現役時代からも含め、いわゆる“普通の家族像”などはまったくなく、きょうだい間の交流も事実上の断絶状態であったことを明かしたのだ。
弁護士からは、「家族関係がドライということですか?」と補足質問があったのだが、一茂は「ドライというか、これが普通だと思っていました」と受け流した。
つまり、長嶋家は世間一般の家族像とはちがうものであるがゆえ、「新潮」がいうような「普通の家族の光景」などなくて当然ということなのだ。言い換えれば、一茂は“国民栄誉賞授与式の夜に家族でお祝いなどをしませんけど何か?”と主張しているのである。
もちろん、家族のあり方にはさまざまな形態があるだろうし、率直にいえば、“普通の家族が何か”という問いに正解などないのかもしれない。
だが、世間一般の人々が長年抱いてきた、“理想の家族像”的な長嶋ファミリーのイメージを根底から覆すような証言だったことは間違いないだろう。
ところが、こんな衝撃的な事実が、法廷で当事者によって語られたにもかかわらず、メディアでは一切報じられていない。一茂の発言は、スキャンダル好きなマスコミにとっては、いかにもおいしいネタにも思えるのだが、どうしてまったく報じられないのか。
前出の週刊誌記者がその背景を解説してくれた。
「実は一茂は、ほかにもいくつかの裁判を起こしています。前述したグッズ売却を報じた『週刊ポスト』とは係争中ですし、同様に『週刊文春』とは、昨年最高裁までいって勝訴しています。いずれも弁護士は最強とうたわれる弘中惇一郎氏。どの媒体も下手なことを書けば訴えられると尻込みして、一茂関連の話題には触れないようにしているという状態なんですよ」
なるほど、ここにもマスコミお得意の自主規制が働いているということなのである。
だが、一茂はただのタレントにとどまらず、テレビ朝日『モーニングバード』でコメンテーターも務めて、自らの意見を発信する立場にある人物である。こういった人物の実像を伝えることは、メディアにとって重要な役割の一つであろう。
思考停止して、すぐにタブーを作るメディアの体質はどうにかならないものなのか。
(窪川 弓)
最終更新:2015.05.11 11:55