『食品表示の罠』(ちくま新書)
スーパーマーケットやコンビニで食品を買う時、多くの人が賞味期限や原産地、原材料名などの表記を少なからず確認するだろう。「中国産はいやだなあ」とか「妙な添加物は入ってないだろうか……」とか、気にする部分は人それぞれだろうが、食品表示が買物をする際のひとつの指標となっていることは間違いないはずだ。
その一方で、デパ地下で量り売りされている惣菜には、値段とアレルギー表示こそあるが、そのほかの表示がない。なるほど、デパ地下の惣菜は妙な食品添加物も使われておらず、健康にも良さそうだ…なんて思ったら大間違いだ。
料理研究家の山中裕美氏の著書『食品表示の罠』(ちくま新書)では、デパ地下の惣菜に食品表示がない理由について、こう説明されている。
「客の求めに応じてその場で容器に詰めて販売をする対面販売は、食品衛生法、JAS法のいずれからも原材料や食品添加物の表示義務がありません」
スーパーやコンビニの惣菜はパック詰めされた状態で陳列販売されているため、表示義務が生じるとのこと。予め容器に詰めているか、その場で詰めるかの違いだけで、表示義務の有無が決まるというのだ。
たしかに飲食店では原材料や添加物に関する情報を開示する義務はなく、デパ地下の惣菜は飲食店と同じ扱いということなのだろう。しかし、そもそも飲食店であってもどんな食材を使っているか分かったものではなく、しっかり情報を開示してほしいと考える消費者も少なくないはず。つまり、現在の食品表示のルールそのものが、かなり不十分なものなのだ。
前出の『食品表示の罠』では、そんな食品表示の不十分な例が、いくつも紹介されている。
たとえば、パンに使われる「生地改良剤」。生地をスムーズに発酵させ品質を安定させるために使われるものなのだが、その「生地改良剤」のひとつである「イーストフード」が問題視されたことがあった。
「イーストフード」とは、イースト(酵母菌)の栄養源などとして使用される添加物のこと。その成分は食品衛生法により16種類に決められており、その配合はメーカーによって様々だという。そして、その16種類には入っていないが、発がん性が指摘される臭素酸カリウムの粉末を混合したイーストフードが使用されていたことがあり、これが大きな問題となったのだ。