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大塚家具よりエグい? 「パナソニック」創業者の娘婿をめぐるドロドロ人事抗争の歴史

 さらに、高木は決算発表から約半年後に松下冷機の大型冷蔵庫の4機種40万台について、「予想以上に不良品が多かったため、全面交換に踏み切った」と発表。その10日後には、交換対象の冷蔵庫を約56万台に上方修正している。そのうえ「人体に危害を加える性質のものではない」との判断から、これまで消費者に積極的に説明をしてこなかった、などと新聞の取材に答えていたのだ。

 こんな高木の言動に社員たちも不信感を抱いていた。

「高木社長は、冷蔵庫事件を治めるためにお越しになったと思っていたら、逆に、どんどん問題を複雑にし、大きくしていった。社長の会見を見ながら、あれは、事前に渡されたペーパーを棒読みしているなと感じたものです。でなければ、社長が、あんな不正確な説明をしたり、わざを消費者の怒りを買うような発言はしないでしょう」(松下冷機元幹部社員・同書より)

 この欠陥冷蔵庫事件では、松下冷機製の冷蔵庫だけでなく、松下冷機がコンプレッサーを提供していたシャープ製の冷蔵庫でも欠陥が見つかっている。しかし、こちらについては「原因は、冷蔵機能の容量とコンプレッサーとの組み合わせにあった。要するに、シャープ製の冷蔵庫の設計に問題があった」(松下冷機元役員・同書より)とのことだが、高木の不正確な説明ゆえに、それらすべてが松下冷機のせいであるかのような印象を与えてしまった。

 そして、この不祥事は親会社である松下電器にも波及。その結果、当時社長だった谷井が辞任することとなる。

「通常、どのメーカーでも不良品の販売が判明すると、テクニカルサービス部門の修理技術者が、購入者の家を一軒一軒、個別訪問し、部品の無償交換などで、その問題を消していく。対応を誤った場合は別として、いちいち社長のクビが飛ぶような性格のものではなく、谷井の辞任は実に不可解な決断であった」(同書より)

 そもそも「欠陥冷蔵庫事件」は、高木の松下冷機社長内定から始まった不祥事だ。それが最終的に親会社松下電器の谷井社長辞任にまでつながったのだ。その辞任が“不可解な決断”であったことを考えると、もしかしたら最初から谷井の失脚こそが目的で、誰かが高木を送り込んだのでは……という想像も膨らんでしまう。正治と谷井との対立が激しかったことを考えれば、なおのことだ。

 谷井の後任として松下電器の社長に就任したのは森下洋一。もともとは谷井に忠誠を尽くしていたが、社長就任後は正治派に鞍替え。正治の意のままに動いていたという。そして森下自身もまた、社長としての決裁権と人事権を存分に行使していたという。

「なかでも驚かされるのは、副社長の村瀬が、苦労してソニー、フィリップスとともにまとめ上げていたDVDの規格を、営業上の判断からではなく、単なる気まぐれから、一方的に変更してしまったことだろう」(同書より)

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