逆に、原発のコストパフォーマンスがいいというのも真っ赤な嘘だ。原発の建設費はバカ高く、しかもそこに、核燃料サイクルや核のごみの最終処分、廃炉などの費用などがかかり、その金額は10兆円以上にのぼるのだが、電力会社のコスト計算にはそれは入っていない。
これ以外にも、原発を受け入れた自治体への交付金やら原発の研究機関への研究費、核燃料税、そして国の機関の人件費など、毎年4000億円以上の金がかかっている。
さらに、福島原発事故を受けて、再稼働には新しい規制基準を満たさなければならないが、その対応にも膨大な金額がかかる。電力会社は1兆円と試算しているが、この試算には「配管の多重化」など含まれていないものも多く、実際はその数倍はかかるのではないかと言われている。さらに、福島原発事故の結果、損害保険の保険料が数百倍にも跳ね上がると言われている。これのどこがコストパフォーマンスがいいのか。
また、コストのことを反論すると、原発推進派はふだんは絶対に考えてもいないくせに環境の問題や将来の資源枯渇の問題を持ち出す。しかし、だったらなおさら、再生可能エネルギーの普及政策を進めるべきだろう。
ところが、電力会社は昨年、再生可能エネルギーの買い取り見直しを発表。太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)は2009年からスタートしたが、電力会社は買い取る上限を設けると言い出した。この裏側には、電力会社と政府が一丸となって進める原発再稼働の問題が潜んでいるのは明らか。この2月に安倍首相は「再生可能エネルギーの最大限の導入を進める」と国会で述べていたが、本気で取り組むつもりなどさらさらないのだ。
ようするに、電力会社や政府、専門家などは原発の既得権益を守りたいということが最大の目的であり、そのためにわざと原発に依存する体制をつくり上げようとしているだけなのだ。これは、福島原発事故を引き起こした原子力ムラの利権構造の完全復活である。
そして、これはマスコミも同様だ。彼らは電力会社の広告漬けになり、電力会社に仕事を世話してもらうという利権を守るために、再び原発の必要性を唱え、反原発の意見を封じ込め始めた。その最たるものが、武田鉄矢の「テレビが1日6時間放送をやめる覚悟がないなら原発再稼働反対をいうべきではない」発言だろう。
この発言自体は前述したようになんの根拠もないが、背景に「原発の再稼働が止められたら自分たちの既得権益がおびやかされる!」という恐怖があることはひしひしと伝わってくる。
「決して損得だけで物事を考える人間になるな!」って、金八先生は言っていましたがね。
(田部祥太)
最終更新:2017.12.23 07:08