たとえば、10年近く前、太田は雑誌連載や単行本、さらにはラジオで、教科書問題、歴史認識、靖国神社などに踏み込み、右傾化の風潮を徹底批判していた。日本国憲法についても「人類が行った一つの奇跡」と敢然と擁護していた。
ところが、2006年、こうした言動に対して右翼団体から抗議を受けると、太田の連載やラジオの発言から徐々に憲法や歴史認識などを扱う機会が減り始め、07年ごろには、こういうイデオロギー的なテーマに触れることはほとんどなくなった。
また、最近も「NHKで政治ネタをボツにされた」と告発しながら、後になって「政治ネタをやらないというのは、打ち合わせの段階で僕らは了承している」「言論統制なんてない」と前言撤回している。
こうした太田光の転向には、常に光代夫人の意向が強く働いているといわれ、今回も「バカ発言」の後に、光代夫人はツイッターで「無礼です。」「バカと言う言葉は、いけません。」と説教していた。
そのため、本サイトも「(太田の安倍政権批判が)またしても光代氏によって封じ込められるとするなら、残念で仕方ない」と懸念を表明していた。しかし、まさか「桜を見る会」の招待まで受けるとは……。
そもそも、安倍首相サイドが「桜を見る会」に太田光を呼んだのは、このお笑い芸人を懐柔しようという意図があったのは明らかだ。
安倍政権になってからの「桜を見る会」の招待客の人選を見ていると、話題のタレント、人気がブレイクした芸能人以外に、ワイドショーや情報番組で発信力のあるMCやコメンテーターをターゲットにしている傾向がある。
太田についても同じだ。『サンデー・ジャポン』(TBS系)という政治のニュースも扱う情報番組のMCをつとめ、ラジオ等で再び政治的発言を口にし始めていた。そんな芸人を取り込み、批判を封じ込めるために、これといった大きな話題がないにもかかわらず太田を呼んだと考えるべきだろう。
そして、太田が「バカ発言」をした後も、官邸は招待をキャンセルすることなく、逆にわざとニュースになるよう安倍首相が太田にアプローチし、プラスのイメージを拡散させた。ようするに、太田は安倍首相の宣伝戦略、情報操作戦略に全面協力してしまったのである。この浅はかさにはもはや、言葉もない。
しかも、こうした安倍首相の思惑に乗っかった芸能人は、太田だけではない。昼のワイドショーの中でも高い視聴率を誇り、官邸がマークしているという『ひるおび!』(TBS系)のMC・恵俊彰や、安倍首相の靖国参拝を「海外ではヒトラーの墓参りと受け取られる」と批判した春香クリスティーンも招待され、嬉々として駆けつけた。