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「老人は経済的強者、騙して何が悪い」振込め詐欺に走る若者たちの格差社会への復讐心

 だが、たったひとつ共通している点は、騙す側の若者たちが優秀で、しかもモチベーションが高いことだという。

 当初、プレイヤーと呼ばれる若者たちの多くは10代から20代の不良少年だった。しかし08年を前後して、新たな参入者が増加したという。それが一般企業経験者、新卒大学生などだ。その理由は2つあるという。

「第一にリーマンショックを景気とした圧倒的不況の到来。派遣切り、雇い止め、ネットカフェ難民などの困窮層が積極的に集金部隊に取り込まれた。(略)第二にそれまでの振り込め詐欺の代表的シナリオである親族成り済まし(オレオレ)や架空請求・融資保証金詐欺などに加えて、未公開株詐欺・社債詐欺などの金融系振り込め詐欺が台頭したことだ。(略)社会人経験者や大卒者はこうした現場で求められる予備知識を持っている」

 さらに家庭環境が複雑な若者も多いという。シングル家庭、育児放棄、ギャンブル、アル中。そして大卒でも親が借金をして学費を用立てたため、卒業後、その金を返すために仕送りをする若者もいる。就活が上手くいかず、また派遣切りされた者もいる。努力しても将来が安定するという確信が持てない若者たちだ。

 そうした貧困という背景を背負って集まった若者たちは暴力を含めた洗脳ともいえる“研修”で、こんな理屈を叩き込まれる

「人を騙して金を奪っても合法だっていう商売は、腐る程あるじゃねえか。例えば宝石売りはどうだ? 貯金ゼロの人間を騙して200万円のローンを組ませる奴がいる。テレビ見てみろ、効くかどうかも分かんねえ怪しげな健康食品がすげー値段で売られている。(略)これは犯罪かもしれねぇけど、最悪の犯罪じゃねえからだ。いいか? いま、詐欺でひとり騙して取る金の単価ってのは、200万円程度だ。お前らにとって200万円ってのは、とんでもねえ額だろ? それ取られたら、首くくるかもしれねえ。生き死にの問題だろ? でも、詐欺で200万円取るのは、その日のうちに200万円用意してポンと払える余裕のある人間だ」
「そこに本気の痛みはねえ。それが即生き死にに関わるような人間じゃねえ」
「ほとんどの老人はただ自分のために金を溜め込んで使わない」

 彼らにとって、金を持った高齢者は騙してもいい存在であり、同じ世界の人間とさえ思えないようになっていく。こうして暴力あり、洗脳あり、根性と根気を試される研修に残った少数精鋭の優秀で貧しい若者たちが、罪悪感を感じることなく、いや、むしろ高いモチベーションを持って犯罪に手を染めていくのだ。

「この歪みまくった日本の階層化社会の中で、彼ら老人喰いの若者たちは必然的に生まれた。そこにはいわば『闇の再配分』といった位置づけがあり、彼ら自身がそれを大義名分として掲げている」

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