「東京電力の対応とはほとんど無関係に、いつしか沈静化していった」
福島原発事故にはいくつもの「謎」が存在し、その謎は解明されないままだ。そして本書には“幸運”という言葉が随所にちりばめられる。
予期せぬ爆発を起こした4号機についても、2号機とともに“最悪のシナリオ”と“幸運”が存在した。定期検査中だった4号機の燃料はすべて使用済燃料プールに保管され、もっとも高い熱量をもっていた。
「爆発によってプールの底が抜けて冷却水が漏れ出し、核燃料がむき出しになり過熱すれば、核燃料を覆っている被覆管が溶け出す。(中略)むき出しのプールから直接、大量の放射性物質が放出されることになる」
そうなれば2号機のケースと同様、福島第二原発も高濃度の放射性物質で汚染され、冷却作業は不可能となり、東日本壊滅のシナリオが想定されたのだ。
しかし、原子炉建屋が原形をとどめないほど大爆発を起こしたにも関わらず、核燃料プールは無事だった。さらに“幸運”なことに、定期検査のため核燃料プールには「通常の2倍近い貯水量があった」という。
事故の原因さえ分からず、様々な「謎」は何も解明されてはいない。ただ“幸運”の連続の結果、“皮一枚の運”で免れたのが東日本壊滅という最悪のシナリオだったのだ。
事故原因、その責任の所在は不明のまま、汚染水は排出し続け、その処理も進んではいない。周囲の除染もいたちごっこで、多くの住人たちは生まれ育った故郷に帰れずにいる。にもかかわらず、安倍政権は再稼働に向け着々と動き、今年には九州電力川内原発の再稼働が現実化しつつある。
原発事故は決して過去のものではない。現在も続く“人災”なのだ。いまだ謎と危険に満ちた日本の原発。その再稼働を許してはいけない。
(田部祥太)
【特別企画 3.11を風化させるな! 被災地で原発で何が起きているのか(第一弾)(第ニ弾)(第三弾)(第四弾)(第五弾)(第六弾)】
最終更新:2017.12.19 10:06