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トム・クルーズやトラボルタもハマる宗教「サイエントロジー」の恐るべきカルト性

『ハリウッド・スターはなぜこの宗教にはまるのか』(亜紀書房)は、BBC記者であるジョン・スウィーニーが、サイエントロジー教会や、脱退した元信者たちに取材を重ねていくルポルタージュである。当然というか、その過程で著者と教会側はハッキリと対立。激昂した著者が怒声をあげてしまった様子(著者本人も大きなミスだと認めている)をYouTubeに流されたり、行く先々で教会関係者と思われる尾行者につきまとわれたり、といった緊迫感あふれる描写がちりばめられている。

 特に印象的なのは、著者スウィーニーが信者・元信者いずれのインタビューでもほぼ必ず出す「ジヌーを知っていますか?」という質問だ。それはサイエントロジーにおいてOTレベル3以上の信者たちに知らされるという、ある神話的伝説についてだ。

 7500万年前、銀河連合の独裁者ジヌー(XENU)は、宇宙の人々を冷凍し、地球まで運搬していった。そしてハワイの火山に投げいれた彼らを、水爆によって殺してしまったのだ。彼らの魂は原始人類に宿っていったが、これもジヌーの策略によってセイタンに制御をかけられてしまっている。

 だからサイエントロジーのトレーニングによって、セイタンを解放しなくてはいけない。しかしOT3以上でないと、この「真実」を知るだけで死ぬか精神異常になってしまうので、上位会員にしか伝えられない秘儀なのだという……。

 非信者からすれば、トンデモ空想科学サーガにしか見えないが、「真実」を教えられた会員たちはこれを頑なに信じているという。念のため言っておくと、教会側は公式としては、このような教義があることを否定している。ただ、上位ランクの信者以外には伝えない秘儀だとすれば「公式に認めることも出来ない」わけで、結果として外部者には「そんな話など聞いていませんよ」と答えるしかないのだが(なんだか嘘つきクレタ人のパラドックスのようだ)。真偽は置くとしても、このような言説が広がること自体、サイエントロジーが多くの人々からカルト団体と目される状況をよく表している。

 この他、元信者から聞いた組織の状況、洗脳があるや否やといった質問を教会幹部たちにぶつけていくスウィーニー。もちろん協会側は完全否定して話は横滑り、というか議論にすらならないインタビューの様子が記されていく。そんな白熱しながらも不気味なやり取りを読むだけでも、日本では馴染みの薄いサイエントロジーと社会が取り巻いている空気を感じ取れるのではないだろうか。

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