〈劣悪な家庭環境から生き残った子どもたちは、もしくはそこから逃れた子どもたちの人生は、大きな傷を抱えたまま、そこからも延々と続くのだ〉
同じ境遇の少年たちが集まり、居場所を見つけるように4人は結束したという。その後、2年間で分かっているだけでも2億5000万円を荒稼ぎ、残った1億6千万円を等分に分けて解散、龍真は不動産業を成功させ、もうひとりは足を洗うが、残り2人はヤクザとのトラブルから逮捕、実刑を受けたという。
もちろん、今回の少年たちに関し、ここまで詳細な生い立ちが分かっているわけではないし、現段階では真犯人だと断定されたわけではない。しかし、地元で不良グループを形成し、被害者の少年に万引きを強要し、暴力を振るっていたという報道を見ていると、本書に登場する少年たちが、犯罪に手を染めていくプロセスと共通項を感じてしまうのだ。
貧困、劣悪な家庭環境、地元の不良たちのネットワーク連鎖──。こうした少年たちを巡る状況を改善しなければ、今回のような少年犯罪は未然に防ぐことはできないのではないか。たとえ貧しくても、育児放棄されても、親がいなくても、地域や福祉の目が届く体制にならなければ、同じような犯罪は繰り返されてしまうのではないか。
著者は何人もの“龍真”的少年に取材するなかで、親に恵まれなかった少年たちに心情をこう代弁している。
〈本当に、本当に、この世は不公平に満ちている。(中略)加害者である犯罪少年たちは、被害者転じての加害者だった。もちろん、加害者である彼らの裏には、被害者がいる。(中略)だが、それを倫理的に批判する人たちに僕は問いたい。僕を含めた市井の大人たちは、彼ら被害者だった子供たちのために何をやれたというのだろう。虐待で叩かれている子どもを見れば、それは誰しもが被害者として認識できる。だがその子どもが腹を減らしてモノを盗んだら、その時点で加害者なのか〉
〈ヤツらの人生の、どこに、どんな選択肢があったっていうのか〉
実際、主犯格の少年は「小さい頃はおとなしくて先輩からイジメられていた」との周囲の証言もある。なぜ少年たちは兇悪な人物に変わってしまったのか。
こうした視点で、少年犯罪を検証、考察することが今後重要になってくるはずだ。
(林グンマ)
最終更新:2017.12.13 09:41