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同期が売れていく中、苛酷な建築現場に…「プロレタリア芸人」の怨嗟の声を聞け!

 現場できついのは肉体的なことだけでない。コワモテの職人、気難しい職人も多く、その威圧感に負けてしまうこともしばしばだ。

 あるベテランの作業員から「無理なことは無理と言いなさい」「分からないことは必ず聞きなさい」と指導されていた本坊。しかし、現場の職人が怖いがゆえに何も言えなくなったり、見栄を張って知っているふりをしたりする作業員も多いのだ。

 本坊は、分からないことはなるべく聞くようにしているというが、「怖い職人がゴニョゴニョと小さい声で指示をしてきたときには、聞き返すのが怖くて一か八かで作業してしまうこともありました」と告白している。もしかしたら、やり方を間違えて欠陥建築を生み出しているってことじゃ……。

 また、本坊が「オラオラ現場」と呼ぶコワモテの作業員が集まる現場は、いろいろな意味で恐怖と隣り合わせだ。

 オラオラ現場に1人で行った本坊は、別の作業員から「今日はいいけどな、山ダムの現場はひとりで行くな」と言われたという。どうして山やダムの現場に1人で行ってはいけないのか? その理由はこういうものだった。

「ダム現場で喧嘩なんかすると、すぐにコンクリートで埋めてしまうらしい。ひとりぼっちだと行方不明になっても『仕事が嫌になって帰った』で済まされてしまうから」

 この話を聞いた本坊は現場で初めて会ったおじさんといっしょに昼食を食べたという。殺されないためには、常に誰かとコミュニケーションを取っておかないといけない。その日限りの作業だとしても、どれだけ周りの作業員が怖かったとしても、一人ぼっちは厳禁なのだ。

 ……とまあ、同書ではとにかく、こうした苛酷な建築現場の現実がこれでもかとばかりに描かれているのだ。てっきり売れない芸人のほのぼの貧乏ネタがテーマかと思って読み進めていたら、内容は現代の『蟹工船』。まさにタイトル通り、プロレタリア階級による格差社会告発本になっているのである。

 実際、本坊は政治に対してもこう怒りをぶつける。

「不在者投票にしろ当日にしろ、僕らのような派遣労働者は休みを取って投票に行くしかないのです」
「『選挙に行こう!』とよく言うけれど、一日休んだらマイナス八千五百円なのです。途中で責任を投げ出し、選挙という形で国民の手を煩わせておいて、『選挙に行こう!』じゃねーんだよ、先生」

 もはや政策がどうとかいう以前に、政治に参加する気すらおきない状況におかれているということらしい。 

 そんな本坊だが、一瞬だけプチブレイクしそうになったことがあるという。後輩芸人のとろサーモン・村田秀亮がアルバイトに明け暮れていた本坊に約2年間密着し、その様子を撮影。映像をトークライブで流したところ、それが大受け。ちょっとした話題になったのだ。

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