「店舗数が減少すると、店舗密度が低下した分だけ利用機会が減ることが考えられる。それまでマクドナルドを利用していた顧客でも、いずれはより便利な場所にある競合(コンビニエンスストアや持ち帰り弁当店なども含む)に流れてしまう」
マクドナルドに「行けない難民」(昔からのファンやファミリー層)が増加すると同時に既存店には招かざる「居座り難民」が増大する。
「24時間営業やeクーポンの発行、100円マックやプレミアムローストコーヒーによって引き寄せられた顧客たちである。マクドナルドが新たに誘引したのは、価格感度が高いグループであった。あるいは、24時間営業のマクドナルドを利用するようになった、本来ならばあまり好ましくない層の顧客である」
「居座り難民」が席を埋め尽くし、独自商品の開発はなく度重なるキャンペーンで疲弊する現場と 資産を切り売りすることで米国本社が喜ぶような経営指標をはじき出す経営陣。マクドナルドは完全に壊れてしまったのだ。これらは原田CEOと07年に米国本社から店舗戦略とマーケティング担当のシニアディレクターとして送り込まれたデイブ・ホフマン副社長によって行われたものだという。
「マクドナルドを壊してしまった責任は、行き過ぎた米国の株主資本主義の定見のなさと、短期的に収益を上げようとしたマネジメントの失策にある。前者を主導したのは、不動産リース事業モデルに着目して、直営店舗の売却を促進することを主張したヘッジファンドである。そして、長期的な観点からマクドナルドのビジネスを守ろうとすることなく、『物言う株主』の圧力に抗することができなかった経営陣たちの責任も重い。」
「それでも、失敗を引き起こした加害者のほうはまだ救いようがある。投資家は持ち株を処分して、つぎに投資すべきターゲット企業を探せばよい。そして、マネジメントで失策を犯した経営者は、要求するに足る報酬がもらえなくなったら、自らのマネジメントスキルを活かせる新しい居場所を求めればよい。しかし、真の被害者たちは、そう簡単には職場を替えることなどできない。マクドナルドで長く働いてきた社員とクルーたちである。さらには、本部の経営方針を信じて、ハンバーガービジネスに身を投じたフランチャイジーたちである。」
デイブ・ホフマン副社長は4年間勤めた日本マクドナルドからその功績が評価されてか、11年にシンガポールに移動。アジア全体を管轄することになる。
「ロイター通信は、ホフマン氏の年俸が約3億円に増額されたことを伝えている。ちなみに、2013年に原田氏の年俸は(略)専門経営者としてトップクラスの約3億4900万円となっている」
ボロボロになった日本マクドナルドは原田氏に報酬返還請求をしたほうがいいかもしれない。
(小石川シンイチ)
最終更新:2018.10.18 03:23