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世界が注目する経済学者・ピケティが来日して“アベノミクス”をケチョンケチョンに!

 この不平等を解消するには所得や資産に対する累進課税を強化すべきだというのがピケティ氏の強い主張だ。つまり、資本家・富裕層に重税をかけ、労働者階級に再分配しろというわけである。こうなると、当然、出てくるのが「非現実的な左翼経済学者」「隠れマルクス主義者」などという批判だ。

 たしかに資本主義が抱える構造的矛盾を鋭く言い当てている点や『21世紀の資本』というタイトルの印象から、カール・マルクスの『資本論』を思い起こさせる。

 しかし、なんと本人曰く「マルクスは一度もきちんと読んだことがない」そうだ。理論ばかりで事例がないのが不満だとも。それはそうだろう。マルクスが『資本論』を書いた19世紀半ばは資本主義がまだ緒についたばかりで、具体的データなどなかった。ピケティ氏が駆使したように、ビッグデータをコンピュータで解析できるいまとは時代が違う。

 ただ、『資本論』も『21世紀の資本』も結論は非常に近い。マルクス経済学からのアプローチとはまったく違うが、19世紀のマルクスが予見した「資本主義には致命的な構造矛盾がある」ということを21世紀のピケティ氏がデータを使って証明したともいえる。その意味ではマルクスをちゃんと読んでいなかったこと(マルクス経済学者にならなかったこと)が逆によかったのかもしれない。

 ピケティ氏は米マサチューセッツ大学経済学部助教授として教鞭を執ったこともあり、考え方や理論の組み立て方は米国流のオーソドックスな新古典派経済学がベースになっている。そのくせ、導き出される結論が「資本主義の構造矛盾」ということなので、マルクス経済学者からポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツ、ローレンス・サマーズら米国のリベラル系経済学者まで、幅広い評価を受ける新たな地平を開いたともいえる。

 しかし、こうした“左翼系”経済学者がチヤホヤされていることに安倍晋三首相は苛立ちが隠せないようだ。

 ピケティ氏来日の前日28日の参院本会議で松田公太議員が、ピケティ氏が格差解消の処方箋としてあげる世界的な資産課税強化について問うと、「執行面でなかなか難しい面もある」とそっけなく否定するだけだった。

 ところが、直後に側近から「人気の経済学者なので反論ではなく、アベノミクスの恩恵をアピールすべき」とアドバイスされたらしい。29日の衆院予算委員会での民主党・長妻昭氏との質疑では、「ピケティ氏も成長は否定していない」とまずピケティ人気にあやかったうえで「成長せずに分配だけを考えていけば、ジリ貧になる」と持論を語り、2日の参院予算委員会では「(アベノミクスは)全体を底上げする政策だ」と力説した。

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