YouTube「ANNnewsCH」より
湯川遥菜さんに続き、後藤健二さんの殺害が明らかになり、イスラム国人質事件は最悪の結果となってしまった。しかし、今回の事件は“最悪の始まり”かもしれない。殺害動画アップを受けて安倍晋三首相はこんなコメントを口にした。
「テロリストたちを決して許しません。その罪を償わせるために国際社会と連携してまいります。日本がテロに屈することは決してありません」
「テロリストを許さない」「罪を償わせる」、まるでイスラム国への宣戦布告と思えるものではないか。いや、アメリカが主導する有志連合に日本も加わり、十字軍として空爆に参加する──安倍政権は現段階では否定しているが、将来的にこの悪夢のような事態は十分起こりうるだろう。
日本人2人が殺害されたことで、今後、安倍首相はこれを最大限利用するだろう。イスラム国への憎悪を煽り、有志連合からイスラム国や他の紛争地域への協力が要請されれば自衛隊法を改正してそれに応じる。その上で憲法を改正をめざす。安倍首相がこれまで目論んできたことが、今回の事件で一気に加速する可能性は残念ながら非常に高い。
しかも、これを後押しするのが新聞、テレビなどの大手メディアだ。これまでも日本のマスコミは人質事件に対し、安倍政権のとった交渉を検証し伝えるどころか、全面擁護を展開してきた。
人質事件発覚の翌日、新聞各紙には「安倍政権の人道支援は不可欠。毅然として向きあっていくべき」「(安倍政権の人道支援は)『イスラム国』との戦闘に力点を置いた支援ではない」といった文言が踊った。
これは安倍政権の応援団の読売や産経だけではなく、全国紙すべてが揃って同じ論調だった。
もちろん、テレビはそれ以上の自粛体制だった。安倍首相の責任や政府の対応のまずさを指摘したのは『報道ステーション』『モーニングバード』(テレビ朝日系)くらい。それ以外のすべてのニュース番組は「人命尊重」を錦の御旗に掲げ、一切の安倍政権批判を封印した。
その異様さが際立っていたのが1月30日放映の『朝まで生テレビ』(テレ朝系)だ。多くのパネラーが冒頭から「イスラム国」の名称を政府が使用する「ISIL」と呼ぶべきだと主張し、身代金を払わなかった政府の対応を「毅然としていた」と賛美していた。 人質が取られていたタイミングでの中東歴訪や、「イスラム国と闘う」というカイロでの安倍の演説に疑問を呈した精神科医の香山リカとテレ朝コメンテーターの川村晃司は、他のパネラーから袋叩きにあった。