「報道の自由度」世界59位の国の首相・安倍晋三氏
フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件をめぐっては、日本のメディアも大々的な報道を繰り広げ、「どんな理由があるにせよ、表現の自由へのテロは許せない」と一斉に声を上げている。そして、わが日本国の安倍晋三首相も例の舌足らずな話しぶりでこう言い切った。
「今回のテロは報道機関へのテロであり、言論の自由、報道の自由に対するテロであり、いかなる理由であれ、卑劣なテロは決して許すことはできないと思います。強く非難いたします」
だが、これらの台詞を聞いても、頭をよぎるのは「なに、他人事みたいに語ってんだよ」というツッコミだけである。
なぜなら、日本でもつい最近、同じような「言論・報道の自由に対するテロ」が起きたにもかかわらず、彼らはそのことには一切触れようとしないからだ。
そのテロとはもちろん、慰安婦報道に携わった朝日新聞の元記者への脅迫事件のことだ。まず、韓国人元慰安婦の証言を報じた植村隆元記者が非常勤講師を務める北星学園大学(札幌)に昨年5月と7月、そして12月と3回にわたって「辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける」「釘を混ぜたガスボンベを爆発させる」という脅迫文が、9月には吉田証言を取り上げた清田治史元記者が教授を務める帝塚山学院大学にも「辞めさせなければ学生に痛い目に遭ってもらう。釘を入れたガス爆弾を爆発させる」という脅迫文が送りつけられた。
この結果、清田元記者は同大学を辞職に追い込まれ、植村元記者はネットで娘の実名や写真までさらされ、「反日サラブレッド」「自殺するまで追い込む」などという脅迫を受けた。
学生や娘への危害をちらつかせるかたちでの脅迫というのは卑劣きわまりなく、学問の自由や大学の自治を破壊するばかりか、まさに「言論・報道の自由」を根底から揺るがす「テロ」にほかならない。
しかし、この件について安倍首相は非難の言葉を発しないばかりか、完全に知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。メディアも朝日批判をがなりたてるだけで、この事件についてはほとんど報道していない。