年収は「最高年収は、2千万くらい」(平本一穂)といった声もあるように羽振りが良さそうに見える一方、
「家を借りようとしたんですが、厳しいんですよ。不動産屋のネットワークがあるらしくて、審査に落ちちゃうんですよ。AV男優ってことで。10年分の確定申告書を見せても、社会的信用を得られない。ちゃんと国民としての義務を果たしてるのに(略)認められないんですよね。僕がAV男優をやって稼いだお金は、一般の人が稼いだお金とおなじ価値じゃないんです」(森林原人)
と、杓子定規な現実の冷たさを突きつけられることもある。
肝心の仕事内容だが、当然“セックスすること”である。だいたいみな、経験人数は2〜7千人と、一般人と比べるまでもなく圧倒的。こんなにヤレて金も貰えて一石二鳥、と男性なら一度は思ったことがあるだろうが、「男優たちが満足させるべき相手は女優以上に、自分以上に、視聴者」で、「視聴者の性願望を満たすことを目的に射精しつづけ」ているのだ。
相手が好みでなかろうが、当日体調がすぐれなかろうが、「確実にリビドーを喚起し、監督の指示を汲み女優の反応に神経をとがらせ、視聴者を納得させる発射プロセスを完遂して、それで仕事が成立する」。そうして気を使いぬいて黒子に徹し、そのうえで「社会的落伍者などといった、惨憺たるイメージさえセットで負わなきゃいけない」というから、並大抵の精神力では勤まらないかもしれない。
そんな彼らがAV男優になったきっかけの多くは、「最初は制作スタッフで(略)チーフカメラマンに相談したら、『じゃ男優やれ』」(加藤鷹)や、「エロ本の出版社に就職したんだけど、モデルも社員も仕事の一部だったわけです」(日比野達郎)などの、エロ業界の制作側から流れたパターン。次いで、俳優からの転向組もいる。
そんななか、みずから志願して男優の世界に飛び込んできたのは、イケメンAV男優として知られるしみけんだ。しみけんは同書でこう語っている。
「高3の夏ごろ、たまたま見た雑誌に『AV男優体験記』という記事があって(略)意外に現実的にセックスって商売になるんだ(略)だったら俺もやりたい。大好きだからやりたい。そこで進路を決めました」
周囲が大学受験か就職かで揺れている時期、彼は“AV男優”という就職先を決めていた。ただし、本格的にAV男優の道を邁進することになったのは意外な人の助言だったという。