現在、Hさんは『殉愛』の出版差し止めと損害賠償訴訟を起こしているが、その焦点のひとつが、『殉愛』で百田が書いているHさんがたかじんに送ったメールの内容。『殉愛』ではメールの文面について〈たかじんの携帯に娘から「なんや食道ガンかいな。自業自得やな。」という内容のメールがあった〉と記述されているが、Hさんは「週刊朝日」(朝日新聞出版)のインタビューでこれが虚偽の文面であることを主張。正しくは〈話したいことあるって言うから何かあるんやろなと思っていたけど、そういうことかいな。ショックやな。今週末大阪行くから会いましょうよ〉だったとしている。
また、Hさんは「新潮」でも同じように証言。「新潮」としては訴訟問題でもあるため、仕方なくHさんの言い分も掲載したのだろうが、一方でこのHさんの主張に対するさくら夫人の反論は、こうだ。
「お嬢さん(Hさん)からメールが来たとたん、主人は“自業自得や言いよんねん”と吐き捨てたのです。ただ、主人は嫌なメールはかたっぱしから消す人だったので、今は残っていません」
驚くべきことに、さくら夫人はHさんのメールを実際に見たわけではなく、たかじんから聞かされただけなのだ。ということは、百田はメールの現物を見てもいないのに、一方的にHさんを貶めるような内容を書いたということになる。よくも自信満々に「(ネットで『殉愛』を批判する者は)事実を何も知らないのに」などといったものである。
さらに、「新潮」は、娘のHさんの弁護団が「週刊朝日」のインタビューで明かした遺産相続をめぐる問題についてもふれているが、これも全く反論になっていない。Hさん側は『殉愛』を名誉毀損で訴えた訴状で、「さくら氏が無償の愛を注ぎ、相続にも何も求めず謙虚な姿勢を示してきたという作品の基調はそもそも事実に反する」とし、「週朝」ではHさんの弁護士がこんな証言をしている。
「たかじんの金庫には2億8千万円の現金があったが、さくら氏はこのうち、1億8千万円は生前、取り交わした業務委託契約に基づいて自分のものだと主張している」
また、さくら夫人は、当初の遺言執行人であるY弁護士を途中で解任しているのだが、その際、Y弁護士が〈さくら氏から言われたことに驚きを受けました。その内容は自宅金庫の中の現金は私のものにして欲しいというものでした〉という陳述書を提出したことが明らかになっている。
ところが、これに対するさくら夫人の反論は「あの陳述書に書かれている発言は全部嘘です。」というだけのもの。それでいて、「(金庫から)4000万円がなくなっていた」として、「窃盗もしくは横領で刑事告訴することも視野に入れています」と、お金に対する並々ならぬ執着を見せている。
ところが、これでも百田は“さくらさんは自分からはお金を要求していない”“たかじん氏が妻が生活に苦しむことのないようにいくばくかの財産を遺しただけ”などと強弁し、「文春」も「新潮」もそれに疑義を一切はさむことなく丸乗りしているのだ。