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膣にヒアルロン酸、処女膜再生…女性の「性器美容整形」の実情

 また、もともと肌が色黒だという29歳女性の場合は、いつしか美白信仰が肌から性器にまで及ぶように。性器に美白クリームを使用することはもちろん、「下着の摩擦がよくない」と聞いてからはずっとノーパンで過ごし、化学的なナプキンではなくオーガニックの布ナプキンを使用。さらには、性器に重曹を叩き込んだり、オキシドールやイソジンを塗り込んだりと、涙ぐましいほどの努力を続けてきた。だが、性器の色は白くなるどころか「やればやるほど黒く汚くなっていく」気がしたという。

 性器の黒ずみ問題だけではない。前述したGスポットへのヒアルロン酸注入だって、「出産後に膣がゆるくなってしまった人」や「出産時の会陰切開で雑に縫われてしまった人」なども多い。子どもを産んで、夫から「ゆるくなった」と言われた女性や、ゆるいと思われているのでは?とひとり悩む女性たちだ。この現実から見え隠れするのは、女性たちの肉食化などではなく、むしろ「男性から愛されないのでは」という不安感の強さのほうだろう。

 こうした不安は、「女子力」という言葉からも伺える。女子力とは、「見た目もキレイで、中身も良い子で、たくさんの男性から言い寄られて、その中からよりどりみどり、一番条件のいい男性を選べる」こと。そんな女は、はっきり言って妄想の産物に過ぎない。しかし、「結婚=幸せ」という価値観が根強くこびりついている女たちは、「女子力向上」を謳うメディアの情報を実践し、メイクやダイエットで見た目をみがき、習い事で内面をみがき、「最後の武器」としてセックスをみがこうと躍起になる。

 だが、世間に氾濫する女子向けセックスマニュアルが書く「愛されるセックス」は、著者が指摘するように「本当にやらなければならないことが多すぎる」。たとえば、「an・an」(マガジンハウス)2014年8月6日号に掲載された恒例のセックス特集では、「命懸けます!イラマチオ」というハードな見出しが躍り、唾液を出せだの奥歯が当たらないようにしろだのと推奨。しかも、女性の場合は、テクニックを身につければいいという単純な話ではなく、「受け身になりすぎてもいけないし、積極的になりすぎてもいけない」という掟つき。イマラチオまでしておいて一方で恥じらえとは、どれだけ演技力が必要なんだよと言いたくもなる。

 本書ではほかにも、メディアが流布する“女磨き”としてのセックス情報に乗せられ、「精子を飲むと肌がキレイになる」という科学的根拠もない迷信を信じ「3回に1回くらいの割合で精子を飲む」女性なども登場。「メディアの情報を鵜呑みにする女が悪い」と非難するのは簡単ではあるが、それでは女性が抱える性の悩みの根深さは解消されない。著者も書いているように、「その悩みはバイアグラを飲めば解決、という単純なものではない」のだ。

 女が性をオープンに語れる時代になったとはいうものの、結局、ベースにあるのは男性本位のセックス観でしかない。問題の本質は、そこにあるのではないだろうか。
(水井多賀子)

最終更新:2018.10.18 03:15

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