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男脳・女脳に根拠なし!「◯◯しない男、◯◯しない女」の煽りに騙されるな!

 男女とはこういうもの、を示し続ける五百田の本は、そもそも脳科学を使った論拠すら仕立てていない。「多くの女は、恋愛の先に結婚や子どもというゴールを見ています。『好きだから』と言いつつも、頭のどこかでは『生活』のために結婚しようとするのです」との論旨に11万人が頷いていたとしたら、と考えるだけで虫酸が走るし、「多くの若い男性は、性欲に支配されています。そのため、『女っぽくてエロいもの』を備えている女性にキュンとします。たとえば、プルプルの唇や、柔らかそうなおっぱい、大きなおしり……」には、返す言葉を探し出せない。

 もう今や朽ちた慣習と信じたいが、女性社員が淹れたお茶は美味しいねと言ったり、露出が高い服を着たらそれを何がしかのOKサインと見なしたり……これらの男目線の好都合解釈を押し並べて「勘違い」と捌いたのが牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書)だ。

 一方、五百田は働く男女の差を、男は権力を求める一方で、女は安定を求め、「福利厚生の充実した安定企業で『ずっと働いてほしい』と言われたい」と分析している。その思考はまさに牟田が指摘する「勘違いセクハラ部長」そのものだろう。

 アナウンサーとして内定していた女性を、「クラブでの勤務経験があるのに報告しなかった」という理由で内定取り消しとした日本テレビは、女性に対して「アナウンサーに求められる清廉性に相応しくない」と書類を送っていたそう。この「清廉性」が「アナウンサーに求められる」ではなく、「女子アナウンサーに求められる」であることは自明。人の採用・不採用を性差から発動する「清廉性」なんてものに堂々と依拠してしまうのを見るにつけ、この手の「あるある男女格差本」がまだまだ売れ続けることを改めて嘆かわしく思う。
(武田砂鉄)

最終更新:2015.01.19 04:12

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