大阪維新の会(日本維新の会 大阪府総支部)公式サイトより
「在日特権を許さない市民の会」(在特会)をはじめとする極右ヘイト団体と、安倍晋三首相以下、政権の中枢をなす閣僚たちとの親密な関係が次々と明らかになる中、案の定と言うべきか、橋下徹・大阪市長が注目を集めている。といっても、「ヘイト団体幹部との写真」や「20年の付き合い」のような話ではなく、在特会・桜井誠会長との“直接対決”が近々実現しそうだというのである。ただし、在特会やヘイトスピーチをめぐるこれまでの橋下市長の発言はスタンスがはっきりせず、会談も単なるパフォーマンスと見られている。しかしいずれにせよ、昨年、国内外に波紋を広げた二つの発言──「従軍慰安婦が必要だったのは誰でもわかる」「沖縄の米軍基地司令官に風俗活用を勧めた」──に象徴されるように、橋下市長は基本的に歴史修正主義的かつマッチョ思考の人物。在特会とも相通ずる面があるだけに、その言動には注意を払ったほうがよさそうだ。
橋下市長は昨年5月の「従軍慰安婦」発言直後、記者から「市長の発言がヘイトスピーチを助長しているのではないか」と問われたが、その際には「自分の発言で国民がどう動くかまではコントロールできない。ヘイトスピーチは抑制すべきとは思うが、表現の自由の問題もあり、権力者が規制するのはかえって危険」と答えていた。しかし今年7月、在特会の朝鮮学校に対する街宣を禁じた大阪高裁判決が出ると、「ちょっとひどすぎる。表現の自由を超えている」「個人のモラルが機能していない場合には公の一定の介入は必要」と、対策の検討を庁内に指示。同時に「デモで騒ぐより、市役所の前でやってもらったらいい」「僕が直接対応するのも一案」と、面会の意向を示した。
ところが、それから2カ月半後、9月25日の定例会見では「最近の在特会デモの報告を見る限り、『死ね』や『殺せ』とかはなくなって、表現は極めて穏当。これは主張やデモとして認められなきゃいけない」と前言を翻し、在特会が問題視する在日コリアンの特別永住資格についても「そろそろ終息に向かうべき。未来永劫続くものではない」と同調してみせた。かと思えば、同じ会見の中で「文句があるなら政府や国会議員に言うべきで、公権力を持たない人たちに言うのは卑怯で情けない」「(在特会の桜井)代表とかいうのが、俺は(面会に)行かないとかなんとか、また偉そうに(言っている)。何様だと思ってるのか」と批判してみせる……といった具合に、発言を二転三転させている。
善意に解せば、表現の自由との兼ね合いを考えての慎重姿勢とも取れるが、言を左右にしながら、何が一番得策か探っているようにも見える。在阪メディア関係者の間では「在特会との直接対決なんて、いつもの思いつき」「自己アピールに利用しようとしているだけ」との見方が強い。というのも、在特会を提訴した在日コリアン女性らヘイトスピーチの被害者側の面会要望に対して、橋下市長は「市民局が要望を聞く。僕が出なければいけないことと、そうでないことを分けさせてもらいたい」と、あっさり拒否しているのだ。在特会と公開の場で会えば自らの影響力を誇示できるが、被害者と会っても何の得にならない、という計算が透けて見えるようである。