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ツイッター社でドロドロ内紛劇! 謀略、追放、クーデターにCEOは嘔吐

 2人の軋轢の外枠をシンプルに説明すれば、“仕事の流儀の違い”である。金と権力のるつぼでは男同士の友情など容易く崩壊するという典型的な例であるように思えるだろう。だが、本質は別だ。2人は根本から異なっていた。“Twitterをどう見るか”という最も重要な部分において。

 最後にもうひとりだけ登場人物を紹介する必要がある。共同創業者は4人いると言った。ITオタクのノア・グラス。彼は、ジャックやビズよりも先に、エブの親友となり、ビジネスパートナーとなった人物だ。「Twitter」という名称を発案したのも彼である。

 Odeoに後のTwitter創業者たちが集結し、すこしばかりの歳月が経過したある日、ノアは、ジャックが「ステータス」という構想を口にするのを聞いた。パソコンに“今どうしているか”という現況(status)を表示させるというアイデアだった。ノアは大声を出した。「分かったぞ!」と。彼は辞書を開いた。そしてその単語を見つけ出した。

 [twitter]——「特定の種類の鳥の小さなさえずり」「ふるえるような小さな声やくすくすと笑う声などの、似たような音も指す」。

 本書で描かれる「創業者」たちの逸話に、数億人のツイッターユーザーたちがリンクする。“それ”をどう見なし、どう使うか。なんのためのものなのか。

 ノアにとってそれは“人々の孤独感を癒すためのもの”だった。この“さえずり”が独りぼっちでパソコンに向かってばかりいたノアのような人間に光明を与えてくれると信じ、開発に尽力した。だが皮肉にも、Twitterが軌道にのる前に、ノアはエブたちによって追放されてしまった。

 エブにとってそれは“人々がどこでなにをしているかを共有するためのもの”だった。「通りの角で火事が起きて、それをツイートするようなとき、火事のあいだに自分のステータスを書き込みはしないだろう」。ジャックとの果てしない議論のときに、エブは言った。「こうツイートする。サード・ストリートとマーケット・ストリートの角で火事だ」。ニュースソースとして分かち合うところに、Twitterの可能性を見ていた。

 ジャックにとってそれは“自分のエゴを見せつけるためのもの”だった。「いや、火事を見ながらステータスを書く」。彼はエブに反論した。「こう書く。サード・ストリートとマーケット・ストリートの角で火事を見ている」。つまり、ツイッターはあくまで「自分のことを話す道具」だということだ。

 どうだろう。あなたは何のため“さえずる”? これらはまったく異なるツイッターの用法だ、と著者はいう。そして、このジャックとエブの決裂の根源は、同時にTwitterを特徴づける最大の要因でもあったのだ、と。

《自分のことか、相手のことか? エゴのことかそれとも他人のことか? 現実では、その両方だろう。いっぽうがなければ、もういっぽうは成り立たない。一四〇文字の単純なステータス・アップデートは、はかなく、自己中心的だから、長くは生き延びられない。一四〇文字のニュース・アップデートは、瞬間的で、ニュース速報としては中身が貧弱だ。ふたりとも気づいていなかったが、そのふたつが組み合わさっていたからこそ、ツイッターはひと味ちがっていたのだ》

 人命を救う救難信号になり、革命の一助になり、自己顕示のホワイトボードになり、炎上のフィールドにもなる、たった140文字のツール。その使い方に対する考えが、人生までも左右する。今まで明かされていなかったTwitter創業の軌跡。その設計思想や彼らの人間ドラマに興味のある人は一読してみるといい。読了後、あなたは一寸考えるだろう。そしてまたパソコンに向かう、あるいはスマートフォンを手に取るに違いない。
(都築光太郎)

最終更新:2015.01.19 05:32

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