その疑惑とは、ソチ五輪の男子フィギュア代表選手の選考に関してのものだ。このときは代表選手3人が選ばれたのだが、その選考過程は非常に疑問の残るものだった。まず、1枠目は全日本選手権の優勝者が選ばれるため、羽生結弦選手に決定。続く2枠目は、全日本の2位、3位という条件があるため、町田樹選手。ここまでは順当だった。問題は最後の3枠目だった。
オリンピック選手の選考は全日本選手権の成績が重視されるのだが、高橋大輔選手は直前にケガをして、5位に終わってしまったのである。そして、代表候補の資格のある全日本3位に入ったのは、小塚崇彦選手。当然、多くの人は3枠目に小塚が選ばれるだろうと思っていた。当人達も同様で、順位がわかった後、小塚選手は満面の笑みをたたえ、高橋選手は号泣していた。
ところが、ふたをあけると、3人目の代表には高橋選手が選ばれたのである。「オリンピック時点でのケガの状態」「精神的支柱」という選考理由が説明されたが、これらはあらかじめ決められていた選考基準にはないもの。こうした不可解な選考に一部のスケート関係者からは批判が巻き起こると同時に、こんな噂がささやかれた。
「高橋びいきの橋本会長が高橋の代表入りをごり押ししたんじゃないのか」
実際は高橋選手の代表決定は強化部会の全会一致で決まったのだが、その流れをつくりだしたのは橋本氏だった。というのも、問題の全日本選手権が始まる前、高橋選手がケガでグランプリファイナルを欠場することになった段階で、橋本氏は「すべては全日本選手権、ソチ五輪のことを考えて。彼と周囲の判断を見守ってどういうサポートをすればいいのか、考えていきたい」と、高橋選手の五輪出場が既定路線であるかのようなコメントを出したのだ。
「橋本氏が高橋の選出を露骨に命じたということはないでしょうが、あの発言で、強化部会も理事会もその意向をくみとったんじゃないでしょうか。実際、今のスケート連盟の理事会、強化部会はほとんどが橋本派で固められていますからね」(スケート関係者)
メディアは加害者が女性で被害者が男性ということから、今回の事態を軽視しているのかもしれないが、セクハラやパワハラの本質は同じであり、男女は関係ない。しかも、橋本氏の場合は自分の地位や政治力を使って好みの選手を狙い撃ちにするようなやり口である。ある意味では、柔道日本代表監督のセクハラよりも悪質といえるかもしれない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2014.08.28 02:23