そして、擬態上級者になると、“ヲタバレしないようにしなくては”という強迫観念からではなく、楽しみながら擬態しているようだ。そのため、彼女たちはどんなに好きなキャラがいても、そのグッズをそのまま身につけたりはしない。その代わり、「まるで彼氏の系統にファッションを合わせる女子」のように、キャラのイニシャルグッズ、イメージカラーの服や小物を取り入れていくのだ。パッと見オタク的なものなど一切身につけていないように見えるが、実際はそのキャラに染め上げられた自己満オタクファッションに仕上がっている。彼女たちからすると、もはや色を見ただけで「○○くん色!」とそのキャラが思い浮かぶレベル。だから、そのときハマっているものによって、身につけるものの色や雰囲気もガラッと変わるが、それによってヲタバレする可能性はかなり低いはずだ。
ほかにも、非オタの友だちと会う前には待ち受けを変えたり、部屋の見えるところにマンガやグッズを置かないようにするなど、陰ながら努力して世間に溶け込もうとしている擬態女子だが、それを見破る方法もある。それが、「休日は何してますか?」という質問をするか、一緒にカラオケに行くこと。どんなに表面を取り繕っても、本来使えるだけのお金と時間をオタク趣味に費やしたい彼女たちにとって、また別の趣味を作ったり、アニソン以外の流行の曲を覚えるための時間などない。この方法でもボロが出ないようなら、一流の擬態女子と言えるかもしれない。ここまで来ると、お互い非ヲタ同士のフリをしているが、実はヲタ同士だったなんてこともありそうだ。
なんとも涙ぐましい努力ではある。が、ちょっと待ってほしい。オタク全盛のこの時代、そもそもここまでして隠さなくてはいけないことなんだろうか……。
(田口いなす)
最終更新:2018.10.18 04:13