必ずしもオリジナルで斬新なアイディアが必要だというわけではないというのだ。自分が子どもの頃に好きだったもの、熱中したものを、思い出して焼き直す。たとえば、『イナズマイレブン』は、日野氏が子どもの頃に読んでいたマンガ『キャプテン翼』がヒントになっているという。
そういえば、『妖怪ウォッチ』も『ドラえもん』がベースになっているという話がある。主人公のケータはのび太、同級生のフミちゃんはしずかちゃん、ガキ大将のクマはジャイアン……。日野氏は最近のインタビューで、そのことを認めてこう答えている。
「例えば、ケータはのび太ほど“ダメ”な子ではないが、何をやっても普通でキャラがたたないところを、現代版のび太として制作したのです」(「AERA」14年6月30日号)
また、この本の中で強調されているのが、クロスメディア戦略だ。日野氏はただゲームを作るだけではヒット作を生み出せないと断言。ゲームをヒットさせるには、アニメやマンガ、映画など、多角的なメディアでの「仕掛け」が必要だという。そして、その「仕掛け」はワンパターンではなくタイトルごとに異なると分析している。
「マンガやアニメとストーリーを連動させたり、ソフトにプラモデルをつけたり。売るための話題作りという一面もありますね」(同書より)
実際、このクロスメディア戦略は『妖怪ウォッチ』でもかなり周到に展開されている。
まずはゲーム発売前の12年末から「コロコロコミック」(小学館)で連載をスタートさせ、ゲーム発売半年後の今年1月からTVアニメを放映。企画時からウォッチやメダルなどのグッズ販売を想定してストーリーに組み込み、相乗効果による大ヒットを作り出した。これらのメディア戦略の設計もすべて日野氏が考えているのだ。
日野氏がもうひとつ意識しているのは、ゲームファン以外の層の取り込みだ。たとえば、『レイトン教授』シリーズでは、女性をターゲットに考え、そのためにさまざまな仕掛けをしたという。声優にタレントを起用し、パッケージの裏面にもそのタレントの写真を大きく使用。デザインも女性誌風にして、ワイドショーの取材も受けた。
「妖怪ウォッチ」でも同様で、ゲームでは主人公の性別を選べるなどユーザー層を狭めないような仕掛けをしているし、アニメでは、あえて大人にしかわからないネタを入れて、家族で楽しめるような工夫もしているという。