周知のように、AKBはメンバーのグラビア出演をはじめ、カレンダー、パンフレット、公式本などの“利権”を各社に分配することで、メディアを手なづけてきた。2〜3年前から、AKBのスキャンダルを書けるのは「週刊文春」(文藝春秋)だけ、という状態がずっと続いている。その関係が今回、存分にいかされたようなのだ。
実際、襲撃事件直後から、マスコミは運営の意を受けて、事件がAKBビジネスに影響を与えないように報道を誘導してきた。前出のスポーツ紙記者が自嘲気味にこう話す。
「運営側は当初、事件そのものを“なかったこと”にしようとした節さえありました。一部のスポーツ紙では文化芸能部がそれをのみそうになって、社会部と大もめにもめたと聞いています。ただ、事件については、Twitterで情報が出回り、共同通信も配信したので、さすがに報道しないわけにはいかない。そこで、運営側がいってきたのは、目前に控えた総選挙と絡めるな、異常者がおこした例外的な犯罪であることを強調してくれ、というお達しでした。もちろん、各社とも全面協力でしたよ」
さらに、握手会が中止に追い込まれる事を危惧した運営は、担当記者たちに「事件と握手会とは関係がない」というロジックをレクチャーし、擁護記事を書かせていたという。
「握手をしてレコードを売るというのは、昔から演歌歌手などもやっている、芸能界全体でやっていることだと強調してくれ、という要請でした。つまり、AKBは特別なことをやっているわけじゃない、と。実際、一部のスポーツ紙や週刊誌ではこのレクチャーどおりの論調で記事を書いていて、思わず笑ってしましましたね」(前出・スポーツ紙記者)
ようするに、こうしたマスコミの情報誘導によって、AKB商法追求の動きは完全に封じ込められ、なんの批判もされないまま、握手会復活が実現してしまったのだ。
それにしても、いくら利権を分配されているとはいえ、ここまでメディアがAKBの言いなりになってしまう理由はなんなのだろう。
「AKBのマスコミ対策は、テレビをケイダッシュのS氏が、週刊誌やスポーツ紙を秋元康さんの弟さんがやっているんですが、この弟さんがすごくうまいんですよ。たんに利権をばらまくだけでなく、メディアとまめにつきあって、うるさ方の雑誌編集部のキーマンをことごとく取り込んでしまっている。しかも、講談社や小学館だけでなく、『BUBKA』のようなマイナーなメディアまで差別せずにそれなりの利益を分け与えてコントロールしていますからね」(前出・週刊誌記者)
秋元弟氏がそこまですごい手腕をおもちなら、いっそメディア対策のノウハウを指南するビジネス本でも書いたらどうだろう。企業の広報担当者がこぞって買いに走って、ベストセラーになることうけあいだと思うのだが……。
(田部祥太)
最終更新:2014.07.08 08:09