『「生きる」ために反撃するぞ! 労働&生存で困ったときのバイブル』(筑摩書房)
今年3月頃から閉店中の店舗が目立ち、5月末にはアルバイトによる「ストライキ」騒動にまで発展した大手牛丼チェーン「すき家」。騒動の背景にあったのはバイトの一斉退職、通称「鍋の乱」の存在だ。
他の牛丼チェーンでは1店舗につき2名以上の店員を配置するが、すき家では経費削減のため、業務をバイト1人だけで行う「ワンオペレーション(ワンオペ)」が主に深夜帯で常態化していた。これが作業負担の大きい「牛すき鍋定食」の発売と重なり、反感を買ったという。
報道によると、結局騒動による閉店はなく、千葉県の食肉加工工場でのたった1名のアルバイトによるストに終わったようだ。匿名の呼びかけがSNSで拡散され大騒ぎになったものの、フタを空ければ大規模な労働運動にならなかったことから、メディアは愉快犯的側面を指摘していた。しかし、これは本当に空騒ぎだったのだろうか。“1人スト”は何の意味もないのだろうか。
そもそも労働組合の多くは、いわゆる「企業組合」だ。団体交渉をしたこともなければ、ストという「伝家の宝刀」を抜いたこともない、事実上の「御用組合」となっているケースもままある。また、内規で正社員以外の加入が制限されている場合も少なくない。
そこで注目を浴びているのが、1人でも加盟できる合同労組やユニオンである。前述の工場ストも、千葉県の合同労組の加入者によるものであった。
法的に正当なストを行うためには、事務手続きやスト権確立の投票などが必須。法律知識もある程度必要となる。しかし個人加盟の労組に所属すれば、専門家たちの協力により、合法的な労働運動への敷居がぐっと低くなる。
こうすることで1人からでもストは実行できる。だがその場合、効果はそれほど高くないという意見もあるようだ。であれば支援を受けつつ、バイト仲間で組合を結成するのはどうだろうか。結成自体は通常2名以上の仲間がいればできるとされている。
『「生きる」ために反撃するぞ! 労働&生存で困ったときのバイブル』(雨宮処凛/筑摩書房)のなかには、2008年神奈川県のガソリンスタンドで打たれたバイトによる運動の模様が詳述されている。