なぜ高市首相は「秘書を信じる」と強弁するのか?高市事務所では政治資金規正法違反隠しの領収書偽造疑惑も
高市事務所の「領収書偽造疑惑」発端は2022年、上脇博之・神戸学院大学教授が、高市氏と「自民党奈良県第2選挙区支部」の会計責任者で公設第一秘書の木下剛志氏を、政治資金規正法違反の疑いで奈良地検に告発したことだった。告発によれば、第2選挙区支部が開催した2019年・2021年の政治資金パーティをめぐり、高市氏の選挙区である奈良県山添村の「自民党山添村支部」は「パーティ券購入」として各22万円を支出したと報告。しかし、受領側である第2選挙区支部の収支報告書にはその記載がなかったのだ。
この件を「しんぶん赤旗 日曜版」が取材に動くと、第2選挙区支部側は「販売したパーティ券は20万円分と12万円分だ。先方が勘違いして22万円と記載した」と主張。そして、取材の3日後には山添村支部が高市氏側の主張どおりに収支報告書を訂正したのだが、そこでは22万円の領収書を、取材後に第2選挙区支部が再発行した12万円分の領収書に差し替えられていたという。山添村支部の支出が22万円であれば高市氏側の不記載となるため虚偽の領収書を再発行し、虚偽の報告をさせた疑いが出てきたのだ。
だが、高市氏は2023年1月の閣議後会見で、この報道に対して「まったく事実ではない」「『(領収書を)差し替えた』という件に強く抗議したい」「強く憤っている」と否定し、自身の旧Twitterアカウントでも〈報道で大迷惑をしています〉と主張。まるで誤報の被害者であるかのような態度を示したのである。
ところがこのあと、山添村支部の代表者や会計責任者から「訂正は全く知らなかった」「関与しておらず、誰が訂正したのかもわからない」という証言が相次いだばかりか、「しんぶん赤旗 日曜版」が山添村支部の訂正願の筆跡を鑑定した結果、第2選挙区支部の会計責任者である木下氏の筆跡と同一人物のものだと判定されたのである。
不記載がわかった時点で素直に謝罪と訂正をすればいいところを、不記載をごまかすため、まさか会計責任者でもない支部の収支報告書を勝手に虚偽の訂正をするとは──。こちらの問題は昨年9月に上脇教授が告発を奈良地検が不起訴としたことは不当だとして検察審査会に申し立てをおこなっている。
しかも、木下秘書の特徴は、不正が発覚しても開き直り、恫喝で封じ込めようとするところだ。2024年の総裁選では、高市陣営が全国の党員らに政策リーフレットを郵送するという“ルール違反”をおこなったにもかかわらず、わざわざ記者会見を開き、選管委員会に対応を求めた党執行部に対して「公平性に欠ける」「執行部が総裁選に口を挟むこと自体あり得ない」と逆ギレ猛批判したことでも知られている。
どうだろうか。ここまでの疑惑を振り返っただけでも、この人物の潔白を「信じる」なんてことができるはずがない。
にもかかわらず、高市首相がいまだ「秘書を信じる」と言い張るのは、先にも述べたように、その疑惑の多くに自身も関与している、あるいは把握しながらも黙認あるいは放置していたからとしか考えられない。
実際、今回のネガキャン動画の作成・拡散についても、秘書レベルでは終わらない新たな事実が出てきている。高市首相が「私は秘書を信じる」と答弁した翌日の12日、「週刊文春」は電子版の前打ち記事において、高市陣営で誹謗中傷動画の“SNS班の責任者”だったのは、今年4月に黄川田仁志こども政策担当大臣の補佐官に就任したばかりの西田譲・元衆院議員だということを報じたのだ。
来週の「週刊文春」にはその証拠とさらに決定的な新事実が掲載されるともいわれている。
いずれにしても、高市事務所や首相の最側近が自民党総裁選、国政選挙において対立候補の誹謗中傷動画の拡散を依頼していたという今回の問題は、金にあかせてデマを流し、公正な選挙を歪める行為が政権与党のなかでまかり通っていたことの証明であり、とても看過できるものではない。しかも、高市首相自身がこの不正行為に関与もしくは認識していたとすれば、首相辞任も免れないレベルの重大な問題となる。
実際、国会で高市首相に森議員がこの問題を問いただしたあと、国民のあいだでも疑問の声がこれまでになく噴出しており、SNS上では、高市首相の「私は秘書を信じる」という答弁がXのトレンド1位になった。今後は国会はもちろん、新聞・テレビも含め徹底した追及・調査が必要だろう。


