「子ども」を持ち出し「ルール」を語った性加害企業の井ノ原副社長に拍手する御用マスコミの異常
ようするに、会見場が騒然としたのは、ジャニーズ側のこうした理不尽な対応に対し、質問を無視されたジャーナリストや記者たちが、マイクを通さず質問の更問いをしたり抗議をおこなったということにすぎない。
なかでも、望月記者は、司会者が会見を強引に打ち切ろうとした際、マイクなしで声を上げ、“ジャニーズの番頭”として長年事務所の中枢にあり “ジャニーズをもっとも知る男”と呼ばれてきた元副社長の白波瀬傑氏に言及。「白波瀬氏は前回……」と東山社長に投げかけると、東山社長は「白波瀬さんにはやはり説明責任があると思うので、うちの事務所に携わってくれた人たち、やはり協力を仰ぎたいなと思うので、それも含めて検討していきたいと思う」と回答した。
このやりとりは、毎日新聞が「東山氏、白波瀬前副社長に「説明責任ある」」と題して記事にしたように、非常に重要な意味を持つ。望月記者は挙手しても当てられることはなかったが、報道として価値ある言質を引き出す質問をおこなっていたのだ。
ところが、こうした追及に対して、勝手なルールを設けた側である井ノ原らが「子どものために」などという美辞麗句で抑え込もうとすると、会場からはよりにもよって拍手が起こり、井ノ原側についてしまったのだ。
そして、御用メディアのスポーツ紙やネットメディアが“暴走記者に対して井ノ原が冷静に呼びかけ”といったかたちで記事にして拡散したのである。
ジャニーズ事務所で性加害がここまで広がったのは、ジャニー本人や事務所の問題だけでなく、そうした実態があるにもかかわらず、ジャニーズ事務所に唯々諾々と従って、批判を封じ込めてきたマスコミの責任が大きいが、その体質はまったく変わっていないということではないか。
実際、今回、会見で抗議の声を上げたことで、バッシングを受けている前出の尾形氏は、会見での御用マスコミのふるまいを暴いた上、こう喝破している。
〈驚いたのは、真面目に質問しようとする私たちに対する、テレビや新聞の大手メディアのスチールカメラマンやビデオカメラマンたち、芸能リポーターたちからのヤジでした。不正な「ルール」であってもジャニーズ事務所の意向に従え、と言う彼ら彼女らの忖度と共犯性が、ジャニー喜多川氏の性加害を50年にわたって続けさせてきた原動力であり、その共犯関係がいまも根強く続いていることを思い知りました。〉
〈多くのメディアが、私や望月さんを批判する記事を書くでしょう。私は彼らに問いたいと思います。あなたは、八百長を強要するルールを守れと言うのか。そして、あなたたちはジャニー喜多川氏の数十年に及ぶ性加害のなかで、何をしてきたのか。メディア人としての悔恨や怒り、責任感は全くないのか、と。〉
〈新社長や新副社長に説明責任を求める私たちの質問から、ジャニーズ事務所は徹底して逃げようとしました。東山氏は私の質問に少しだけ答えましたが、マイクを持った質問はさせてもらえませんでした。
そしてその状況を、社会の公器である、記者やカメラマンたちが、性加害問題を解明しようとは全くせずに、逃げるジャニーズ事務所に同調して私たちに匿名でヤジを浴びせ、ジャニーズ側に同調して拍手までしている。
今日の会見で性加害問題を数十年隠蔽してきたジャニーズ事務所の体質が全く変わっていないことが露呈しました。そして共犯であるテレビ・新聞が、追及しようとする記者たちに怒号を浴びせる、おぞましい姿を目の当たりにしました。
この問題は全く終わっておらず、むしろ解明が始まったばかりであり、ジャニーズ事務所やそれを取り巻くメディアが必死の隠蔽を続けようとしているのだ、ということを体感しました。〉
尾形氏の言うように、マスコミはいまも、本音のところでは、ジャニーズの不祥事を隠蔽したがっているのである。いまは世論の目が厳しいから批判しているフリをしていても、実際は決定的なことは追及しようとしない。そして、誰かがそこを追及しようとすると、とたんにスクラムを組んでつぶしにかかる。
マスコミがこういう状態では、今後、芸能界で同じような問題が起きても報道されることはないし、もしかすると、ほとぼりがさめたらジャニーズタブーも復活する可能性すらある。