吉村洋文大阪府知事SNSより
連日大きく報道されている、中古車販売大手のビッグモーターによる保険金不正請求問題。顧客から預かった車を故意に傷つけるという手口の悪質さのみならず、前社長が社員に責任を押し付けた会見の内容などもあり、マスコミはここぞとばかりに大々的に報じている。
たしかにビッグモーター経営陣のコンプライアンス意識の欠如やガバナンス不全の実態は酷いが、マスコミ報道がここまで過熱するというのは異常ではないか。ビッグモーター以上に問題をはらんでいる木原誠二官房副長官の警察捜査介入疑惑やジャニーズ性加害問題はほとんど報じないくせに、ビッグモーターにはとことん食いついて叩きまくる──。ようするに、叩ける相手は叩き、叩きづらい相手にはダンマリを決め込んでいるにすぎない。
だが、醜いのはマスコミだけではなかった。大阪府の吉村洋文知事がビッグモーター問題に絡んで、あ然とするようなブーメラン発言をして、ツッコミが殺到しているのだ。
一連の報道のなかでビッグモーターが店舗の前にある公道の街路樹に除草剤を撒き、枯らせていたという問題が発覚したが、吉村知事が26日、SNS にこんな投稿をした。
〈大阪府内でも不自然な枯れ木案件が見受けられましたので、担当部局に調査の指示をしました。街路樹は公共物ですので、調査すべきと考えてます。〉
パビリオン建設の遅れをはじめとする大阪・関西万博問題の渦中にある吉村知事だが、そんななか、ビッグモーターの除草剤使用問題にいち早く食いつき、“すばやい対応”をアピールしたのである。
だが、「街路樹は公共物」とはよく言ったものだ。というのも、大阪市では住民への説明会の開催などもないまま街路樹などを大量に伐採しており、2022年度から24年度にかけて、大阪城公園などの公園樹も含めて約1万本を撤去する予定。この問題が報じられた今年2月には、SNS上で「身を切る改革」ならぬ「木を切る改革」だとして批判が巻き起こったばかりだからだ。